今まで我々は、こうした空の青色が我々を元気にしてくれると思っていました。たくさんの画家たちも、この空の色を表現するためにさまざまな手法を用いて、空の青色を描こうと努力をしてきたのです。
ところが最近、Cell誌に非常に驚くべき研究が発表されました。
青い空を見たときに気分が高揚する、すなわちムードが改善する、というのは、色の問題ではなくて、空のブルーライトによってOPN4が刺激され、脳に直接的な信号を与える、ということがわかったのです。
空の青色を見て我々がなんとなく爽快になるのは、雨の日や台風の日といった日に比べて生存確率が上がり、気分が和らぎ、幸せな気持ちになる、ということだと思います。
さらにこの研究では、OPN4が刺激されると、記憶力まで良くなるということをマウスを用いた実験で示しています。外のブルーライトによってOPN4が刺激されると、脳の記憶のメカニズムが活性化し、それによって記憶力が良くなるというのです。
すごいことだと思いませんか?
たった1つの波長の光が、我々の脳の機能や、脳の活動を制御しているのですから、本当に驚くべきことです。
目は見る機能だけでなく
時計の機能も備わっている
目は見るためにあると、ずっと信じられてきました。
でも、今述べたように、空を見ることで気分が良くなる、記憶力が良くなる、というのは、非視覚型光受容体によるものだったということは、目が見るためばかりのものじゃないことを表しています。
昔の携帯電話は、名前の通り単なる電話そのものでした。他の人と会話をするためにありました。ところが現在の携帯電話は、PCにもなるし、カメラ機能や音楽再生機能もついているし、時計や歩数計もついているし、睡眠活動計やメトロノームもついているし、カレンダーや予定管理表もついているしと、とても多機能なものになっています。
目もじつは見るためばかりでなく、非視覚型光受容体を介して、非常にさまざまな機能を持っている器官だということがわかってきました。
“Eye is not only a camera, but a clock”(目はカメラばかりでなく、時計でもあった)と言われるように、目の大きな機能に、じつは時計があります。目に入ってきた光によって、朝だと感知し、そして光がなくなると夜が来たと感じ、我々の体内時計が動きます。