このように、我々にとって光情報というのは、生存に必要不可欠なものでした。これらはすべて視覚情報、つまり目で見るための情報です。進化の過程で緑だけ見えていた人類よりも赤が見えるようになった遺伝子変異を持つ人類のほうが生存確率が高くなって(熟した果実をすぐに探せるとかして)、だんだんと遺伝子として定着したものと考えられています。

生存確率を上げるための光受容体が
現代社会で働かない状態になっている

 我々はそれらの視覚型光受容体に加えて、5つの非視覚型光受容体を持っています。

 非視覚型光受容体は、見ることではなく、健康を維持し、体を整え、外界に適応し、ストレスを緩和し、睡眠を誘導し、危機感と安心感をもたらすなど、視覚情報を介さず直接的に光の情報を使って生存確率を上げるための受容体なのです。

 これらのうち、OPN3・OPN4・RLH・RGRなどの光受容体は、すべてブルーによって活性化されます。

 元々、光受容体が生まれたのは海の中ですから、ブルーの光で活性化されるというのはとても合理的です。

 ところが、1つだけブルーではなく、バイオレットの光によって刺激されるものがあります。それがOPN5です。

 現代社会では、バイオレットライトが部屋の中に存在せず、さらに人々は屋外に出なくなってしまったため、5つの重要な非視覚型光受容体のうちの最も大切なOPN5が働かない状態になっているのです。

 5つのうちの1つということは、すべてが同じ重要度だとしても、20%のパフォーマンスが落ちることになります。

 20%ってすごいことですよね。もし給料が20%上がったらどうですか。自分の記憶力が20%アップしたら?20%も速く走れるようになったら?

「おそとぼっこ」(編集部注/「ひなたぼっこ」にならった、筆者の造語。屋内のひなたではなく、外にいること自体が目と体と精神によいと提唱している)は、この働かないOPN5をしっかり使うことによって健康度をアップさせるという、科学的エビデンスに基づいた画期的な問題解決法なのです。

青空が放つブルーライトは
脳に直接的な刺激を与える

 いい天気の日に空を見上げると、綺麗なブルーの世界が広がっています。なんとも気持ちいいですよね。思わず手を伸ばして、背筋も伸ばして、深呼吸をしたくなってしまいます。

 なんて素晴らしい日だ、生きてて良かったな、外は気持ちいいな――。