マスクにとっての「ツイッターの成功」とは?

ようやく、話をどう導くべきか、レスリーも心を決めたようだ。

「ツイッターについてなんですが、5年から10年くらいあとにどうなっていたら成功だと判断されますか。あなたにとって……また、我々全員にとって」

話を俗事に戻すわけだ。

「成功とはデイリーアクティブユーザーが大幅に増えることだと私なんかは思うのですが……デイリーアクティブユーザーの10億人突破は可能でしょうか」

だが、俗事などマスクの眼中にないようだ。

「ざっくりした話として、ツイッターはこれからも文明と意識を盛りたてていけるのか、です。長く続く強い文明、現実とはなにかをもっと深く理解できる文明に、我々は――ツイッターは――資することができるのか、です」

マスクが語り出した壮大な未来図

マークは、また、椅子の背に身を預けた。

こういう言葉を雑誌かなにかで読んだら、かっこつけやがってと思ったかもしれない。

ところが、マスクが実際に語っているのを目の当たりにすると、言葉の向こうの熱意を感じると、想いのこもった語り口を耳にすると、マスクが本気であるのがひしひしと伝わってくる。

カリスマで理解しがたいが、なぜか親近感を覚えてしまう。ただ、ネジが何本か飛んでいる気もする。

ツイッターはソーシャルメディアの会社だ。

人々が好き勝手に自分の考えを投稿する場、日常生活のあれこれを投稿する場、政治哲学や冗談、ミーム、ニュースなど、なんでも好きなことを好きなときに投稿する場だ。

会社としてのツイッターは、そのツイートにはさむ広告を売るとともに、暴力や悪意、誤情報がまぎれ込まないよう、できるかぎりの努力をする。

マスクはどういう会社を買ったと思っているのだろう。

「つまりですね」―マスクが話を続ける。自分の世界にますます入り込んでいるようだ。

「私の哲学は、一種の好奇心なんですよ。宇宙の真理をできるかぎりしっかりと理解したいんです。宇宙の真理を理解するには、意識の広がりや規模を拡張し、意識の寿命を延ばす必要があります」

ここで肩をすくめるような動きを見せると、ようやくレスリーの問いに答えた。なにをもってツイッター買収の成否を判断するのか、だ。

「そうですね……ざっくりした話として、文明の力と寿命をはっきり改善できたら、でしょうか」

不自然な間のあとレスリーが感謝の言葉を口にし、ウェブ会議のウインドウが暗くなった。

(本稿は『Breaking Twitter』から本文を一部抜粋、再編集したものです)