この研究では、型破りな成功をした「ダークホース」には、次のような特徴があるとしています。
標準的な道(競争)ではなく、自分に合った道(個性)を選択する
成功を追求して充足感を得るのではなく、充足感を追求して成功を得る
人と比較し、競争をしていても、「上」は必ずいます。ノーベル賞をとった人も、「ノーベル賞を目指して」研究や活動を続けたのではなく、「自分の充足感(fulfillment)を追い求めていたら、ノーベル賞がとれた」方も多いといわれています。ナンバーワンになろうとしたのではなく、オンリーワンを目指す人が成功するといわれますが、人と比べ始めると、上には上がいることを思い知らされます。それは研究者も同じです。
ただ、ちょっと得意なこと、それをしていると楽しい、満足できるということを突き詰めていくと、結果オンリーワンになっていることがあります。それが科学的に正しいということを、この研究は教えてくれるのです。
早生まれ族は学校でも
家でも好きなことをしている
この「個別化の時代」に有利なのが、早生まれ族(注3)です。なぜなら早生まれ族は、「標準化時代」の無駄な競争に巻き込まれる確率が少ないともいえるからです。
それはなぜでしょうか。
早生まれのSさんは、小学生の頃、休み時間に友だちと遊ばずに、1人でずっと絵を描いていました。お母さんは心配し、小学校2年生の頃担任の先生に、「お友だちと一緒に外で遊ばなくて、大丈夫でしょうか?」と相談したそうです。
担任の先生は、「大丈夫ですよ。早生まれですし、ゆっくり成長を見守っていきましょう」といわれたといいます。Sさんは、その後も教室で絵を描き続けました。お母さんは大きくなったSさんに、「なんで友だちと遊ばないだけで、心配されるんだろうと思った」といわれたといいます。Sさんは現在、美大に通っています。
無理やり友だちとの遊びに参加させられることなく、好きな絵を好きなときに描き続けることができたことで、Sさんはその才能を伸ばすことができたのです。「他の子と同じように」外遊びを強制されていたら、Sさんはもしかすると絵の道に進まなかったかもしれません。