失敗の入り口は、「ただのタレントプール扱い」だった
ある企業(以下、A社)は、2023年末に私たちにこう相談してきました。
「タレントプール採用の一環としてアルムナイの登録を募っているが、登録者数もメールの開封率も低迷している」
そこで、A社の登録ページを確認すると、「タレントプール採用登録ページへようこそ」とあり、登録可能な対象者は次のように記されていました。
●過去に当社に勤務されて、退職された方(アルムナイ)
●過去に当社から内定を受けた候補者の方
●過去に当社の選考を受けられた候補者の方
そして、このサイトに登録するメリットとして、次のようなことが記載されていました。
●当社の求人情報を受け取れます
●当社の採用イベント情報を受け取れます
●当社の求人に関する問い合わせができます
まとめると、
1:アルムナイとつながる企業側の目的が再雇用のみ
2:企業や社員とのビジネスなどのつながり、アルムナイ同士のつながりというメリットがない
3:過去の候補者や内定者と横並びで、アルムナイの扱いに特別感がない
――なので、A社のアルムナイがこのシステムに登録する可能性が低いことは容易に想像ができました。また、ご担当者は、「社員にこの登録ページの拡散を依頼したが、全く登録者数が伸びない」ともおっしゃっていました。
アルムナイにとって、メリットや特別感が少ないタレントプールへの登録を、社員の方が元同期や部下などに勧め難いことも想定どおりでした。A社の退職率と過去退職者数をもとに、登録率と登録者数を当社が試算したところ、実態と大差がなかったことにご担当者は驚かれていました。そして、「アルムナイを再雇用できる仕組みの構築を手伝ってほしい」とご依頼をいただきました。
当社からは、企業とアルムナイの関係は、再雇用/再入社だけではないことや、アルムナイは企業との1対1の関係だけではなく、社員や他のアルムナイとの関係やコミュニケーションを求めていること、そして、社員や他のアルムナイとの関係やコミュニケーションを実現するためにも、再雇用/再入社だけではない多様なつながりとメリットが重要であることをご説明しましたが、ご担当者は中途採用担当であるために、「言っていることはわかるが、他部署を巻き込んで進めることは難しいので、採用部門だけで進められるやり方を教えてほしい」と。また、以前に経営陣に多様なつながりの重要性を訴えた際に、「まずは、タレントプール採用の一環としてやればよい」と言われたことから、「新しい説得材料がない限りは経営陣を説得することが難しい」という考えを共有してくれました。