「MA」の導入に学ぶ

 刻一刻と変化するビジネス環境において、経営層が特に意識しているものとして、「グローバリゼーション」「イノベーション」「デジタルトランスフォーメーション(DX)」などが挙げられます。

 ここからは、デジタルトランスフォーメーションを、歴史とガンダムで説明します。

 デジタルトランスフォーメーションという言葉が頻繁(ひんぱん)に聞かれるようになってしばらく経ちます。CDO(チーフデジタルオフィサー)という役職が誕生したり、ビッグデータやAIなどのキーワードが飛び交い、新しい時代の到来が謳(うた)われています。

 ガンダムの作中でも、ミノフスキー物理学が従来のパラダイムを書き換え、モビルスーツが戦場を様変わりさせたように、デジタルトランスフォーメーションがビジネスのやり方やあり方を激変させるのだという風情(ふぜい)です。

 多様な解釈が百花繚乱(ひゃっかりょうらん)のデジタルトランスフォーメーションですが、ここでは「デジタル化によって消費者や自社オペレーションが今までよりも計測・把握しやすくなることで、マーケティングを含むビジネスのやり方をデータに基づいて大きく進化させること」と理解しましょう。

 それらの進化には、より正確に消費者理解が進むことで売り上げを伸ばしたり、あるいはより緻密に自社の活動を管理することで費用の削減に繋(つな)がったりといったことが期待されます。

 デジタルトランスフォーメーションが社会に重大な影響をもたらすものであるなら、歴史に類似の作用を求めてみることは役に立つかもしれません。そのひとつとして、モータリゼーションを考えてみましょう。

 モータリゼーションとは、人々が自動車に乗るようになった社会現象のことです。筆者はこの現象について、米国勤務時代にイノベーションに関わるプロジェクトで研究したことがあります。そこでは、次のような仮説が議論されていました。

 モータリゼーションは3つの要素で促進されたと考えられます。すなわち、

1.インフラストラクチャーの充実
2.デモクラタイゼーション(民主化)
3.目的・動機の確立

 です。

 日常的に快適にクルマに乗るためには、舗装路に高速道路、信号やガードレール、ガソリンスタンドや販売店などといったインフラの整備が必要です。

 モータリゼーションといえば、まずは自動車そのものを思い浮かべてしまいますが、周辺環境が整わなければ浸透しません。自動車単体では、実はベネフィットを提供できるものではないのです。