万博の本質的な価値とは
日本でも、1970年の大阪万博を体験した世代が「異文化に触れた貴重な思い出だった」と語るように、万博は若者にとってかけがえのない学びと経験の場となるはずだ。筆者は残念でならない。
在日中国人の間でも、「日本人は、どうしてこんなにネガティブなのか?」という疑問が広がっている。「問題があるのは当たり前。そこをみんなで一致団結して乗り越えるのが本来の姿なのに」との声もあれば、「デマや悪意ある報道があまりに多い。まるで万博を失敗させたがっているよう」と首をかしげる声もある。
ある中国人の友人は、「今はどこの国も物価上昇や国際情勢の不安定などで、みんな不満がたまっている。どこかでガス抜きをしたい、大阪万博がその捌け口になったのではないか」と妙に納得できるコメントをしていた。
日本人はなぜ保守的で自己批判的?
実際に万博に行ってきて、もちろん改善してほしいと思う点もある。筆者が感じたのは、英語を話せるスタッフが国内パビリオンに少なかったことだ。見たところ、来場者の半数近くは外国人という印象だったので、多言語対応の強化は今後の課題だろう。
筆者の知り合いの日本人が、「かつて関西国際空港が開港する前も、やたらとネガティブな報道や評判が目立った」と話していた。なぜ、日本人はこんなに保守的で自己批判的なのだろうか。
最も大切なのは、世間の声に流されず、自分の目で見て感じることではないだろうか。近年、円安を始めとするさまざまな理由で海外へ行こうとする日本人が激減している。外国に行かれないならばなおさら、万博は「国内で世界を体験できる」またとないチャンスのはずだ。
万博会場を訪れた日、会場の出口で、一人のスタッフが「大阪にまた来てね」と多言語で書かれたボードを掲げ、来場者に手を振っていた。その姿に、大阪らしい「もてなしの精神」を見た。筆者にとって、大阪は最初に日本に来て留学した地として特別な場所であり、「これが大阪の本当の顔だ」と感じ、とてもうれしくなった。
