頑張りすぎている自分に気づく、ぐっと握りつぶしている自分をゆるめることが大切なのです。体をゆるめる手取り早い方法は、心地よい汗をかける運動を行うことです。以前の記事「顔に“異常なサイン”が出ている人は要注意!放置すると『加速度的に病気が悪化』日本人ほど危険な理由とは?」でも紹介しましたが、運動をすると筋肉が緊張し、心拍数が上がり、いったんは交感神経が優位になります。けれども、今度は反動で一気に体がゆるむ。自律神経の健康的なバランスが取り戻せるのです。ヨガや太極拳など呼吸に意識を向け、オン・オフの動作を繰り返す運動がお勧め。

 運動と同時に「ストレスコーピング」も重要です。「コーピング」とは「問題に対処する」といった意味で、ストレスにうまく対処しようとすること、ストレスを自分でケアすることをストレスコーピングといいます。自分にとってストレスが軽減できることを予めリストアップしておき、ストレスを感じたときにそれを実行するのです。

 臨床心理学ではリストが多ければ多いほどコーピングに役立つ可能性が高いと言われています。私は宇宙飛行士の選抜医師でもあり、彼らの体調もチェックしていますが、超人的に思える宇宙飛行士でもコーピングを作ります。「冷たいタオルを額にあてる」「好きなアーティストの曲を聴く」「大きな声で歌う」「××店のコーヒーを飲む」など、具体的かつ五感を使って気分転換できることがいいですね。簡単なことでいいので、リストは100個を目指しましょう。

 実際に行動に移さなくても、イメージでもいいのです。「初恋の人のことを思い出す」「宝くじの当選金10億円の使い道を考える」などの空想に浸ることでも、ストレスは軽減します。合わせて現状を受け入れる「まあ、いいか」「仕方がない」「気にしない」といった言葉を自分にかけてあげてください。

ある事故で両腕が麻痺
仕事を辞めずに復帰できた理由

 こうして運動やストレスコーピングを行えば、自然とそれがリセットの時間、休息にもなります。

 実は、私もかつて過労とストレスで仕事ができない時期がありました。ある事故をきっかけに両腕が麻痺、動かなくなってしまったのですが、根底にあったのは仕事量の多さ、人間関係を含めたストレス、睡眠不足です。けれども渦中にいるときには気づきません。

 当時、先輩の医師から「症状が良くならなかったら、他の仕事を紹介してあげるよ」と言われました。なぐさめてくれたのでしょうが、「もう医師の仕事は無理だろう」と感じてつらかったですね。そんなとき、入院した先の運動療法を指導する方からヨガを勧められ、最初はいやいやながら取り組んでいました。