「気持ちは届いてる?」蘭子(河合優実)×豪(細田佳央太)“恋未満”の名演が朝から切ない【あんぱん第23回レビュー】

“旧来の嫁”千代子(戸田菜穂)も内心を吐露
「女性たちはどう生きるべきか」考えさせられる

 女性も男性と同じように、という点において、千代子(戸田菜穂)は初めて寛(竹野内豊)のウイスキーを飲んでみる。彼女にとってそれは決して美味しいと感じられないものだった。

 千代子は旧来の嫁として家を守ることにこだわっていた。跡継ぎを産まなかったことをコンプレックスに思っている彼女に寛はそんなことをまったく気にしていなくて、千代子そのものを愛していると言うのだ。この家に嫁いだわけではないと。

 家の存続のための結婚ではなく、愛や信頼によって結ばれる関係性が望ましい。羽多子と結太郎にも深い愛情があった。そういう意味では岩男が蘭子に積極的に好意を示し、結婚しても郵便局で働くことを認めてくれるのであれば、好条件ではあるだろう。

 これからの時代、女性たちはどう生きるべきか、そんなことを考えさせられる回であった。

 でもそれには戦争も関係していそうである。黒井の仮定「国家が非常時になって」からそれがわかる。釜次も、岩男に徴兵検査も受けていないのに求婚とは、ととがめていた。

 1927年に制定された兵役法に基づき兵役義務のある満20歳の男性に対して徴兵検査が行われていた。戦前は男性には兵役義務があったのだ。たまるかー。

『あんぱん』の脚本を手掛ける中園ミホは、インタビューで、「私は今回、戦後80年ということをすごく意識しています。やなせさんの『逆転する正義』という考えは戦争の体験に影響されているものですから、視聴者の皆さんが驚くほどしっかり戦争を描こうと思うと提案したら、反対意見もありました。でもやなせさんを書くことは戦争を書くことと、ある種同義だと私は思うので、そこは譲れませんでした」と語っている。

 このドラマにおいて重要になってくる戦争の気配が近づいてきているようで、ちょっとピリッとした。

 今日のチェックポイント:「たまるか」の応用形「たまあ!」。くら(浅田美代子)が発した。

 「気持ちは届いてる?」蘭子(河合優実)×豪(細田佳央太)“恋未満”の名演が朝から切ない【あんぱん第23回レビュー】