日本株アクティブファンドとして最大級の純資産総額を持つ「ひふみプラス」*などを運用するレオス・キャピタルワークス(以下レオス)が、2025年1月に経営・運用体制の変更を発表。トランプ関税ショックを前に現金比率を高めていたことが話題に。さらにフジ・メディア・ホールディングス(以下フジHD)の株式を5%超取得したことでも大きな注目を集めている。高い人気を誇りながら、運用成績が振るわない中、矢継ぎ早に繰り出される施策は、復活ののろしなのか? レオスの代表取締役社長であり、ファンドマネジャーの藤野英人さんにその真意を聞いた。(ダイヤモンド・ザイ編集部)
*販売会社を通じて購入することができる「ひふみ投信」シリーズの投信。直販で扱う「ひふみ投信」と同じ「ひふみ投信マザーファンド」に投資しているため、直販投信と投資方針、組入銘柄等に違いはない。
トランプ関税ショックの前に
現金比率を引き上げられた理由は?
――今年1月にレオスのCIO(最高投資責任者)を退任されました。「ひふみ投信」の運用体制に影響はありますか?

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藤野 今回のCIO退任は、運用の円滑化とファンドのパフォーマンス向上に繋がると考えています。これまで、私が社長とCIOを兼務し、ファンドマネジャーの人事権も持つ、いわば“独裁国家”のような状態でした。この体制変更により、ファンドマネジャーの評価や人事に関する権限は、新CIOの湯浅光裕が担うことになります。組織内でのチェック機能が強化され、より健全で持続可能な運用体制が構築できると期待しています。
ただし、湯浅自身も現役のファンドマネジャーであるため、さらなる改善の余地は残されていると認識しています。
――2025年2月から現金比率を大幅に引き上げ、3月末時点では11.5%と高水準でした。トランプ関税の問題で4月は株価が乱高下しましたが、この戦略は効果的だったのではと推察します。
藤野 重要なのは、市場で起こることは常に変化しており、過去の経験則が現在の状況にそのまま当てはまるとは限らないということ。固定観念にとらわれず、目の前で起こっている状況に合わせ、柔軟に戦略を修正しています。
特に注目しているのが、トランプ政権の主要人物たちの発言です。トランプ氏本人はもちろんですが、例えば大統領経済諮問委員会(CEA)委員長のスティーブン・ミラン氏などの経済政策に関わる人物の発言や思想は注視すべきでしょう。
彼らの発言も参考に、今年の年初から守りを意識したポートフォリオへと変更しています。トランプ氏などの思想や発言が、米国経済および世界経済にどのような影響を及ぼし、それが巡り巡って個別企業の業績にどう反映されるのか。これを見極めなければならない、非常に特殊な局面です。

日経平均株価チャート(日足)
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――2025年に入ってから「ひふみ投信」の組入上位銘柄に米国株がなくなりました。米国経済の今後の見通しに対する分析は?
藤野 長期的な視点で見ると、米国がかつてのように盤石で健全な投資先とは言えなくなりつつあるのかもしれない。日本では依然として米国経済への信頼感が根強いですが、欧州や中国、さらには米国内の投資家の間でも、米国経済の長期的な見通しに対して慎重な見方が増えているように感じます。
とはいえ、現状で米国に代わる明確な投資先を見つけるのは非常に難しい。結果として、金や米国以外の不動産といった実物資産に加え、日本、中国、欧州といった時価総額が大きい株式市場や、成長著しいインドなどへ、投資資金が逃げ場を求めて循環しているとみています。