
ダルトンが選んだ新取締役候補
北尾吉孝氏に覚える違和感
4月17日、フジテレビの親会社フジ・メディア・ホールディングスの新しい経営体制を巡り、大株主の米投資ファンド、ダルトン・インベストメンツが新取締役候補として提案したSBIホールディングスの北尾吉孝会長兼社長が、フジテレビの株主として経営に参加する趣旨の記者会見を行いました。北尾氏は強気な口調、厳しい面持ち、改革の旗手としてのイメージをアピールしていましたが、私は違和感を覚えました。
理由の第一は、フジテレビにおいては中居正広問題に象徴されるセクハラ・パワハラの常態化の改善が急務にもかかわらず、北尾氏がこの問題に敏感だとは思えないからです。
北尾氏が経営するSBIホールディングスは2020年に元財務事務次官・福田淳一氏を、2021年に前農林水産事務次官・末松広行氏を独立社外取締役に迎えました。福田氏は記者へのセクハラで懲戒処分を受け、末松氏は部下へのセクハラとパワハラで批判を受けた末の辞任だったのですから、北尾氏は今回フジの第三者委員会が最も問題視した部分に配慮していなかった経営者ということになります。
福田氏は2018年、テレビ朝日の女性記者へのセクハラ問題が『週刊新潮』に掲載され、次官を辞任し、直後に減給の懲戒処分を受けています。当初氏は否定していましたが、「今日ね……抱きしめていい?」「旦那は浮気しないタイプなの?予算通ったら浮気するか」「胸触っていい?」といったセクハラ発言とされる音声データが公開され、辞任に追い込まれました。
農水省の末松元次官の場合は、総合食料局食品産業企画課の食品環境対策室長というポストに就いていましたが、総理官邸に内閣参事官として出向していた2003年頃、部下に対して1年以上にわたってセクハラ・パワハラを繰り返していたと報道されました。
末松次官が元部下の女性職員・A子さんに行ったハラスメントは、極めて陰湿なものでした。『FRIDAY』の記事には、「大量のメールを送りつけ、電話をくり返してA子を食事に誘っていました。メールや電話が来るのは決まって勤務時間外、ときには深夜2〜3時だったこともあります。しかも誘い方が狡猾で、『仕事の打ち合わせがあるから今すぐ来い』などと呼び出すんです。以前の上司、しかもすでに末松さんはホープと呼ばれていただけに、A子は逆らえなかった」という告発文が掲載されていました。