「勉強で競争する子」に親が本当に教えるべき競うよりも大切なこと写真はイメージです Photo:PIXTA

勉強や仕事を“競争”と捉えている人は、他人に嫉妬心を抱きやすく、自分自身の「価値」に気づきにくいという。アドラー心理学を研究する著者が、他人との競争にとらわれず、妬む自分を手放すコツを伝授する。※本稿は、岸見一郎『妬まずに生きる』(祥伝社)の一部を抜粋・編集したものです。

自らの学歴を吹聴する人に
欠けている重要な視点

 対人関係に入っていく勇気を持つために必要な価値は、例えば勉強や仕事ができるというようなことではなく、いわば全人的価値でなければなりません。勉強や仕事をする能力、また外見、容姿などの「属性」は、他者との比較で容易に価値を失ってしまいます。

 アドラー(1*)が、「自分」に価値があると思える時にだけ、勇気を持てるといっているのはそういう意味です。これを、これまで使ってきた言葉でいえば「個性」です。自分自身に、「個性」に価値があると思えたら、他者と比べなくてすみます。

 自分の価値は他の誰にも代えることができない自分自身、つまり個性にあると思えない人は、自分の属性にばかり目を向けます。学歴にこだわる人が代表的です。しかし、学歴は自分の価値や本質とは関係ありません。他ならぬ自分ではなく、一般的な人としての自分が他者から受ける評価が気になって仕方ないのです。

 それゆえ、たずねられもしないのに、どの大学を出たといい、それを聞いた人に自分が優秀であると思ってほしいのです。本当に優秀な人はただ優秀なので、学歴を吹聴したりしません。

(1*)…編集部注/精神科医で心理学者のアルフレッド・アドラー