
航空自衛隊の「救難隊」とは、同じ航空自衛隊の飛行機に何かあった場合、事故機を発見し、乗員を助ける任務に就いている人々のこと。台風で荒れる海の上でも、雪が降る高山でも救助に向かなくてはならない救難員は、日々鍛えている自衛隊員の中でもとりわけ屈強かつ強靱な精神を持つ、選ばれし人々なのです(前回記事)。今回は、全国に10カ所ある航空自衛隊の救難隊でも最南端にある、那覇救難隊の救助訓練に同行。救難機「U-125A」に搭乗したレポートをお届けします。(コラムニスト フェルディナント・ヤマグチ)
固定翼機で遭難者を探し、ヘリコプターで救出する
航空自衛隊の救難隊は、基本的にヘリコプターと固定翼機(飛行機)の2機セットで行動する。救難隊員は志願制で、不屈の精神力と超人的な体力が要求される。前回はここまでお伝えした。今回は実際に固定翼機「U-125A」に搭乗し、空の上から続編をお届けする。
……と、その前に。なぜヘリと固定翼機の2機セットで行動するのか、フライトの前にもう一度詳しくおさらいしておこう。
固定翼の救難機は、高高度を高速で飛行する能力を持つ。だから、広い範囲の捜索活動に適している。機体に搭載された赤外線センサーやレーダーを利用して、複雑な地形や悪天候下においても確実に遭難者の捜索を行うことができる。
一方、ヘリは固定翼機では決して真似のできない垂直離着陸や、ホバリング(空中の一点で静止する能力)能力を持っている。これを活かして、発見された遭難者に接近して救助活動を実施する。山岳地帯や海上、あるいは滑走路を持たない離島においては、垂直離着陸やホバリングによる吊り上げ能力は不可欠であり、ヘリの機動性は大きな武器となるのだ。
固定翼機が先行して捜索を行い、遭難地点を特定して、その位置情報をヘリと共有する。そしてヘリが遭難現場に到着するまで上空から監視を継続し、現場の安全を確保する。両機の連携により、「早期発見・迅速救助・安全確保」という救難任務の三本柱を実現しているのである。