もっと成長して30代、40代になってくると、祖父母の話は貴重な情報だったなということがわかってきます。人生を重ねると、祖父母の人生から得た情報が自分の考え方や価値観を組み立てる素材の1つになることも多いのです。
生活の記憶だけでなく、孫に対して、自分の人生を誇りをもって語りましょう。自慢するほどの人生ではなかった、大したことのない平凡な仕事人生だった、別に誇れることも成し遂げなかったなどと卑下して自分の人生を否定してはいけません。
それぞれの場で幸福を求め、いろんな思いを持ちながら精一杯に生きてきたのです。教訓やお説教ではなく、誇りと愛情をもって自分のエピソードを語るのです。
もちろん語りたくないことは話す必要はありません。しかし人から助けられたこと、自分が頑張ったこと、努力による成功体験などを伝えましょう。子どもに自己肯定感を持ってほしいと思うなら、まずは自分の人生を肯定し、ポジティブに表現しましょう。
今の自分の生きている世界がすべてではないのだ、と孫にわかるだけでもよいのです。
まずは身近な孫たちに
自分史を語ってみよう
親の話より祖父母の話のほうが珍しいはずです。私の母は昔話をよくする人だったので、水橋という母の育った海辺の町の暮らしぶり、たとえば豆腐や納豆の行商人が家まで来たことや、近所の魚屋さんに注文しておけば食事の時間に刺身や焼き魚が届いたといったことなど、こまごまと聞いていました。母の父がどんな仕事をしていたかや、母の母の実家が里帰りしたらとても歓迎してくれて夏休み中滞在したことなど、切れ切れに覚えています。
それがどうした、何の役に立ったかと言われるとそれまでですが、前の世代が異なる環境で精一杯生きてきたのだと知れることや、母、祖父母の命の流れが自分にまで続いているという感覚は悪くはないです。私の母は、孫娘たちに自分史を繰り返し語っていました。
年を重ねると自分史を書こうと考える人もいるのですが、まずは身近な孫たちに自分史を語りましょう。自分の生きた証とまでは言いませんが、体験を伝えるのです。
祖父母にも幼い時があって、子どもの頃、若い頃を経て、年を取るまでいろんな人生を経験しているのだと共感してくれるかもしれません。