お金持ちの真似をする前に
一度冷静に考えてみよう

 アメリカ人は、子どものころから、貯金や投資、それからドネーション(寄付)という考えが身についている。ドネーションとは、お金に余裕がある人が世のため人のために寄付するということ。これはキリスト教的観念であって、キリスト教はよく教会に寄付をするし、慈善活動も盛んです。

 だから、お金に余裕のある人たちは、自己の幸福のために、他者に寄付をするわけです。とはいえそれは、考えてみると、莫大な資産を持ってると税金がかかるから、寄付によって租税回避するというドライな側面もあるので、単純な善意とばかりは思えません。寄付をすると、税金が一部免除になる、これはどこの国でもおなじことではなかろうかと思います。それは、まあ信念の問題で、資産運用とか財産保持とかいうこととは、ひとまず全然別のことだといわなくてはなりません。

 まずは「冷静に考えてください」と言いたいのです。日々の生活に使わないようなお金が1億も2億もあるような人に「株の投資でもどうですか?」と勧めて、「でも株だとしくじる場合もあるから投資信託型のものにお金を預けてください」というのは理屈としてわかる。

 でも、私なんぞはそんな余裕はないので、たいせつな自己資金を、誰とも知らぬ人に預けて運用してもらうということが、どうも信用しがたいのです。

株の売り買いで
一番儲かるのは結局誰?

 そもそも「株の売り買いとはなんだろう?」と、私はいつも思うのです。信頼する友人で、日本でも指折りの投資アナリストである岡本和久さんに教えてもらったことなのですが、たとえば、世の中のためになる事業をする人間が出てきた。でも、資本がないからお金をみんなから集めたい。

 そこで、資金を持っている人は「ああ、あれはなかなか見どころがあるし、世のため人のためになる事業だからね。じゃあ、この人にその事業をやらせてみようか」と出資する。で、その人はいいアイデアを以て、世のためになるような事業を続けた結果、10年後には大企業になって莫大な利潤が出るようになった。