(1)「がんばって言う」:どうでしょうか?これができたら悩んでいない、という声が聞こえてきそうです。でも、できるのであれば、効果はありそうですよね。実は、他人にいやだと言うことが苦手だった人が、何度も練習したことで、性被害にあいそうな場面で練習を思い出し、言うことに成功した、という事例もあります。

(2)「何も言わずにその場から立ち去る」:いやだと言うことにストレスを感じる人であれば、これも案外、できることかもしれません。言葉にはなっていませんが、いやな気持ちが態度には表れますし、それ以上の出来事をさけることもできます。

(3)「まずは自分の気持ちをつかまえる」:これは、返事をする直前のことです。実は、これをみなさんにいちばん伝えたいと思っていました。少し高度かもしれません。特に、シーン(19)のように相手から説得されると、相手が正しくて自分がまちがっているのでは、と思うことがあるのです。そうなると、気持ちが混乱してわけがわからなくなります。

 でも、自分の心の「引っかかり」を大事にしてください。これはおかしいことなんじゃないかと感じるとか、いやなことだと感じる、といった「引っかかり」に自ら気づいてほしいのです。それが、相手に意見を言うための第一歩となるでしょう。

心理カウンセラーも実践する
相談者への理解を深める方法

 ちなみに心理カウンセラーは、相談者とやりとりしながら自身の気持ちをつかまえるということをやっています。それは、自分の中に生じてくる感情に気づくことで、相談者がどんなことを伝えたいと思っているのかを理解することにつながるからです。自分の気持ちをつかまえることは、その状況を打開するための糸口となります。

 いやだということを伝えて、相手との関係がこわれるのを気にする必要はありません。それでこわれるくらいなら、遅かれ早かれこわれるものだったでしょう。自分の率直な気持ちを受け取ってはもらえないということなのですから。

「みんな」という言葉にみなさんが弱いこと、知っています。みなさん自身も、親や先生を説得するときに使っていませんか?「みんながしている」と持ち出して、同意を得ようとしたことがあると思います。