逆に、他人から「みんなそうだ」とか「みんな持っている」と言われると、そうでない自分がおかしいとか、悪いかのような気持ちになってしまいますよね。

 こんなふうに、みんながしていることに納得感や安心感がわく仕組みは、心理学によっても明らかにされています。

テレビで流れる「笑い声」が
視聴者にもたらす効果とは

 社会心理学者のチャルディーニは、著書の中で、テレビのお笑い番組に演出として使われる、録音された笑い声の効果について述べています。あの笑い声が流されることによって、視聴者はそのネタをおもしろいと感じ、笑う回数が増えるというのです。これが本当かどうか、機会があったらみなさんも気にしてみてください。

 また、その原理として、ある行動をとる人の数が多ければ多いほど、人はそれが正しいと判断するのだと指摘しました。そう言われると、思い当たることはたくさんあると思います。

 たとえば食事をするためにお店を探すとき、お客がたくさん入っている店はおいしいのではないかと、安心感を抱くことがありますよね。

 つまりシーン(19)では、「みんな」を持ち出すことによって安心感を持たせ、たくみに相手が同意する方向へと誘導していると言えます。

 でも、「みんな」っていったいだれでしょう。具体的に、周りのだれが「みんな」の中に入っていますか?改めて考えると案外、実態なんてないことに気づくはずです。そんな「みんな」に合わせる必要はありません。

手なずけに気づくヒント

 シーン(19)の最後では、「みんなはそうでも、私はまだ無理かな」「私は、今はそういう気持ちになれない」と、自分を主語にして相手に伝えられるといいですね。