「人生の転機にどんな選択をするか?」この問いに答える一冊が、アメリカでベストセラーとなった『Master of Change 変わりつづける人:最新研究が実証する最強の生存戦略』だ。著者のブラッド・スタルバーグはマッキンゼー出身で、ウェルビーイング研究の第一人者。本書が明かすのは、私たちの心を知らぬ間にすり減らし、日々の満足感を奪っている思考の落とし穴だ。この記事では、本書のエッセンスをもとに、変化に翻弄されず「自分らしさ」を保ちながら仕事と向き合うためのヒントを紹介する。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

仕事も人生も停滞する人に共通する「変化拒絶型の思考習慣」その根本にある1つの心理Photo: Adobe Stock

「変化に適応できる人」と「変化を拒む人」の決定的な違い

 会社の方針が変わる時や、新しいシステム・働き方が導入される時、あるいは転職を考えるタイミングなどに、不安で身動きが取れなくなる人は少なくない。

 一方で、そうした変化をむしろチャンスと捉え、軽やかに順応し、次の行動に移せる人もいる。

 両者の違いは、どこにあるのか。

 アメリカでベストセラーとなった話題の書『Master of Change 変わりつづける人』では、精神分析の権威エーリッヒ・フロムの概念をベースに、人の生き方や価値観を2種類に分け、変化への向き合い方を鮮やかに解き明かしている。

 それが、「所有志向」と「存在志向」である。

「持ち物で自分の価値を確認する」所有志向

所有志向の人は、所有物で自分を定義する。だが、物や身分といったものはいつ失ってもおかしくないため、人はもろい存在になる。

 

――『Master of Change 変わりつづける人:最新研究が実証する最強の生存戦略』より

 所有志向とは、自分の地位や役職、年収、肩書きなど、「自分が何を持っているか」によって自分の価値を定義する考え方である。

 こうした「持ち物」にアイデンティティを預けていると、それを失いそうになった時に強い不安や恐れが生じ、変化を避けるようになると本書は指摘する。

内面的な成長に目を向ける「存在志向」

 一方、「存在志向」はまったく異なるあり方だ。

存在志向の人は、自己の中の深い部分――たとえば、自分の本質、中核的な価値観、どんな状況であろうとも対応できる能力など――を自分のことだと認識する。

 

――『Master of Change 変わりつづける人:最新研究が実証する最強の生存戦略』より

 存在志向とは、自分の中にある価値観や学習能力、対応力など、内面の成長に重きを置く考え方である。

「何を持っているか」ではなく、「どんな人間であるか」にアイデンティティの軸を置くため、環境が変わっても柔軟に適応できる。

 存在志向の人は「変化が起きたらどうしよう」ではなく、「どんな変化が起きても、自分なら乗り越えられる」という感覚を持っている。それこそが、次の行動への推進力になるのだ。

 変化の多い今の時代において、所有志向でい続けることはむしろリスクが高い。「これさえ持っていれば安泰だ」と信じていたものが、突然消えることは珍しくない。

 だからこそ本書は、環境が変わった時に拠り所になるのは「持ち物」ではなく、自分の内側にある価値観や対応力だと強く訴えている。

※本稿は『Master of Change 変わりつづける人:最新研究が実証する最強の生存戦略』より一部を抜粋・編集して構成しました。