「飽きた」「眠い」は脳からのSOS
「飽きた」と感じたら休憩を
1つの作業に没頭していたものの、なんとなく飽きてきて集中力が途切れてしまったという経験は誰しもあるのではないでしょうか。この「飽きてきた」という感覚こそ、脳が最初に出す「疲れ」のアラームなのです。脳は千数百億個を超える神経細胞の塊です。それぞれの神経細胞が1000個以上のほかの神経細胞とつながり複雑な神経回路を形成し、脳内に張り巡らされています。
例えば、パソコンに向かい延々と同じ作業を続ければ、ある特定の神経回路だけを酷使することになり、その部分だけが疲弊していきます。これ以上疲弊させては危険と判断した脳は、別の神経回路を使わせようと体にアラームを発します。それが「飽きた」という感覚なのです。
それでも無理に同じ作業を続けると、脳はさらに「疲れた」「眠くなってきた」という次のアラームを出します。それも無視すれば、注意力や判断力の低下、さらには視野が狭くなるなどという悪循環に陥っていきます。疲労をためてしまうと、めまいや不眠といった深刻な症状を引き起こすこともあるのです。そうならないために「飽きてきた」という最初のアラームを感じたら、たとえ作業の途中でもいったん中断し、違う作業を間に挟むなどして脳を休めるようにしてください。
「楽しいから疲れない!」は超危険
「隠れ疲労」に気を付けて!
例えば趣味のプラモづくりや編み物など、楽しい作業は飽きずに没頭してしまいますよね。仕事において集中力が高いことは、ほめ言葉として使われますが、脳にとってはNGです。激しく体を動かすわけではないデスクワークでは、それほど疲れはたまらないと考えがちですが、脳を酷使していることに変わりはありません。評価されれば疲れなど吹き飛ぶという人もいますが、そう思い込んでいるだけで、疲れはたまる一方なのです。集中しているとまったく飽きないという現象は、「意欲や達成の中枢」とも呼ばれる前頭葉の働きが脳の発した「飽きた」という疲れのアラームを意欲や達成感で隠してしまうことで起こるのです。
こうした「隠れ疲労」は過労死の危険をはらんでいます。疲れを意識せず脳と体を酷使し続ければ、脳疾患や心臓疾患など重篤な症状を引き起こし、最悪の場合、死に至ることすらあるのです。やりがいや達成感、賞賛の声、昇進の喜びなどを感じながら楽しく仕事をしているときほど過労死のリスクが高いということが私たちの研究から明らかになっています。どんな人でも1つの作業に集中できるのは1時間~1時間半といわれています。これを目安に作業内容を変えるなどして「疲れ」を深刻化させないようにしましょう。