では一体、疲れているのは体の中のどこか。それが脳なのです。例えば、運動をはじめると、脳も体も酸素需要が高まります。また、体温も上昇します。脳にある自律神経は脳への酸素供給を高め、脳温度の上昇を抑えようと、体中のあらゆる器官に命令を発します。運動負荷が強いほど、脳の指令も複雑になり、さらに細かくなります。その結果、脳の自律神経が疲れてしまうのです。
そこで、脳はこれ以上、自律神経が疲れないよう、「体が疲れた」という誤情報を脳内に発し、休息を欲するようになります。これを受けて私たちは「疲れた」と感じるというわけです。
脳はどうやって
疲れていく?
脳は大きく3ブロックから構成されています。知覚、思考、感情、意思決定、運動など多くの高度な機能を担う大脳。運動やバランス感覚の調整などを行う小脳。そして呼吸、睡眠、食欲や性欲など生命を維持するための機能を担う脳幹です。「自律神経の中枢」は、この脳幹の視床下部という領域に存在し、人間の生命維持に必要な自律神経の調整を行っています。
自律神経の最大の目的は「脳に酸素と栄養を安定供給させ、脳の温度を一定に保つこと」。体は脳からの指令に基づき、動く部品にすぎません。自律神経は1分でも機能停止に陥ると、死に至ります。自律神経からの指示は活動時に優位になる交感神経と、リラックス時に優位になる副交感神経が、それぞれアクセルとブレーキの役割を果たしながら相補的に働いています。運動中、心拍数が上がり呼吸が荒くなる、たくさんの汗が出るといった体のさまざまな変化は、交感神経が各器官に指令を出し、体の状態を安定させようとしているからなのです。この働きを「ホメオスタシス(恒常性)」といいます。しかし、交感神経優位な状態が長く続くと、脳は常に活動モードに置かれることになります。脳を休息させる役割を果たす副交感神経への切り替えもうまくいかず、自律神経のバランスは乱れ、脳疲労が蓄積されてしまうのです。