疲労=細胞のサビ
酸化ストレスが脳をサビさせる
私たちは呼吸によって大量の酸素を体内に取り入れ、そのうちの1~2%が「活性酸素」という物質に変化します。活性酸素とは強い酸化力を持つ酸素の総称で、体内に侵入した細菌やウイルスといった外敵を攻撃するなど、免疫システムをサポートする役割を果たします。
一方で、ほかの細胞や組織なども酸化させてしまい、活性酸素による酸化ストレスに長期間さらされると、細胞は傷つき、まるで自転車のチェーンがサビて車輪が動きにくくなってしまうような状態に陥ります。細胞レベルで酸化ストレスを最も受けやすいのが、エネルギー生産を担っている細胞小器官のミトコンドリアです。酸化ストレスによるエネルギー不足に陥った脳が「サビ」れば自律神経細胞がダメージを受け、本来の働きができなくなります。これが「脳の疲労」を招くわけです。
休息をとっても回復しない、原因不明の疲労感が6カ月以上続くという場合は、「慢性疲労症候群」が疑われます。激しい筋肉痛や発熱、リンパ節の腫れなどの症状が現れ、ベッドから起き上がるのが困難になることもあるほど深刻な病気なのです。「慢性疲労症候群」は健康な人の疲れやストレスが慢性化している状態とは大きく異なるものだということも覚えておいてください。
歳をとると
疲れやすくなるのはなぜ?
歳をとって疲れやすくなった……、50歳を過ぎたあたりからこう感じる人が増えるようです。加齢とともに疲れやすくなる原因の1つに自律神経のパワーの低下があります。疲労度評価機器「自律神経機能計測装置」で計測した結果、自律神経全体のパワーは加齢とともに明らかに低下することがわかりました。60代になると、なんと10~20代の4分の1にまで低下してしまうのです。自律神経は呼吸や心拍、血圧、消化吸収など、体のあらゆる働きをコントロールしていますので、加齢によってそのパワーが落ちれば、当然疲れやすくなってしまいます。 また、脳細胞が酸化ストレスにさらされると血液中などに疲労因子のFF(Fatigue Factor/ファティーグ・ファクター)と呼ばれるタンパク質が増加します。
この疲労因子FFが体内に発生すると、これに呼応するように疲労回復因子FR(Fatigue Recover Factor/ファティーグ・リカバー・ファクター)というタンパク質が活性化し、活性酸素によって酸化され損傷した細胞の修復をはじめます。疲労因子FFの力を抑制させようと働くわけですが、加齢とともに疲労回復因子FRの反応性が低下していきます。これも、歳をとると疲れが残りやすく回復しにくい原因の1つです。