2004年度から23年度にかけての
国立大学への運営費交付金の減少率

交付金13%減が直撃、競争的資金への偏りが大学の研究力低下に直結

 2004年の法人化以降、国立大学への運営費交付金は削減が続き、初年度の1兆2415億円から23年度には1兆0784億円へと、約13%減少した。こうした基盤経費の縮小が、日本の大学の国際ランキング低下の一因と指摘されている。

 一方で、科学研究費助成事業(科研費)やJST(科学技術振興機構)による競争的資金は増加した。科研費は04年度の1580億円から近年は2377億円に増加し、JST戦略的創造研究推進事業予算も04年の105億円から23年以降は437億円へと拡充された。

 こうした競争的資金の増加は、運営費交付金の減額分を一定程度補っている。研究費を審査に基づいて配分する制度は、ガバナンスの観点から合理的であり、研究者間の競争を促す仕組みとして一定の意義がある。

 だが重要なのは、競争的資金が原則として個々の研究者に配分される点である。研究者の活動は、大学の施設や事務職員といったインフラを前提としており、教育も組織的な支援体制と運営によって成り立っている。

 競争的資金にはこれらの共通経費を補うための間接経費が含まれているが、その割合は直接経費の3割程度にとどまり、全体の予算の4分の1弱にすぎない。このため、運営費交付金から競争的資金へのシフトは、大学の共通インフラに必要な資源を細らせる結果となった。

 もとより日本の国立大学は、教員に対する事務職員の数が少なく、建物の老朽化も進んでいたが、こうした構造的な課題は一層深刻化している。インフラの不足を補うために、研究室単位で職員を個別に雇用する必要が生じ、研究者自身が資源管理や人員マネジメントに時間を割かざるを得なくなった。その結果、研究に充てられる時間が削られ、研究力の低下に直結する事態を招いている。

 日本の国立大学の研究力を向上させるためには、意思決定主体である大学、部局、研究者の間で、資源配分の責任と権限の在り方を再検討することが求められている。具体的には、間接経費の比率を引き上げることで大学本部や部局に追加的な資源を配分しつつ、大学全体や部局全体での研究成果について、学長や部局長が説明責任を負う体制に変えていく必要がある。

(東京大学公共政策大学院 教授 川口大司)