定年まであと7年。子どもは小さく、借金もあって将来が不安

「このまま借金がある状況で、将来を見通すことができるのでしょうか?」

 そう言って相談に訪れたのは、会社員のMさん(52歳)です。Mさんは4年前に「授かり婚」をし、会社員の妻(46歳)と3歳の娘さんの3人家族で暮らしています。

 まもなく53歳を迎えるMさんは、勤務先の定年が60歳であることから焦りを感じていました。残り7年の就労期間で借金を完済し、さらに老後資金も準備できるのか……その不安が相談の背景にありました。

 Mさんの借金は、本人名義で約300万円。さらに「自分で返済する」という約束で、妻の未使用クレジットカード2枚からも約90万円をキャッシングしており、合計で400万円近い借金を抱えていました。

 相談には妻も一緒に来ていたので、ある程度借金についても共有していると思っていましたが、驚くべきことに彼女は夫の借金の総額を把握していませんでした。妻は産休・育休中で収入が減少したため、夫がキャッシングをしたことは知っていましたが、すでに返済済みだと思っていたのです。自分名義のカードが使われていることも知っていましたが、その残高が90万円にものぼり、返済されていないという事実を初めて知って、大きなショックを受けていました。

夫の借金に気付かない~別財布家計の落とし穴

 このような状況になった背景には、夫婦の家計管理方法があります。Mさん夫婦は完全な別財布制で、家賃や育児費用などの共通経費は折半、個人的な支出や貯蓄は各自で管理していました。妻は最近、娘さんが3歳児クラスになり保育料無償化の対象となったため「共有家計が少し楽になった」と喜んでいたところでした。そこへ突然、債務整理の話が出てきたので、状況を理解できずにいたのです。

 借金の金額と家計状況を検討した結果、夫婦ともに「法律家に依頼して債務整理をしたほうが家計再建の近道だ」と判断しました。無理な返済を続けると、生活が困窮するだけでなく、将来必要なお金も貯められなくなるからです。

 この話を聞いたMさんは、「申し訳ない」と半ば泣きそうな声で妻に謝罪しました。妻も自分が債務整理の対象になることを知り、大きな衝撃を受けていました。