心のスイッチを入れた瞬間
チーム全体が走り出した

栗山 そのきっかけとなったのが、たとえば骨折してもプレーする源田壮亮やボテボテのゴロでも一塁まで全力疾走するヌートバーなどのプレーだったと思います。彼らの気魄や魂が重なって、選手たちを信じて任せていたらチーム全体が自然と走り出してくれる空気になりました。
横田 源田選手と監督とのやり取りは本当に感動的ですね。源田さんは激痛を堪えて、「とにかくチームのために」と出場を志願したと思うんです。監督も分かっていたから、「源ちゃんはなんでそんなに強いんだ」と聞いたと思うんですが、源田選手はもともと「チームのために」という考え方が強い方なのですか?
栗山 もともとそういうことを考えてやってきた選手だと思います。彼が西武ライオンズのショートのレギュラーになってから西武が一気に勝ち出したんです。もちろん守備はうまいんですけれど、攻撃力もありますし、何よりもチームのためにどうしたらいいかをいつも考えてチームを引っ張れる選手です。
今回はさすがに全治3カ月の骨折だったから無理かもしれないと思いました。でも、彼は何があってもやるって自分でもう決めているんですよ。一切ブレていないんです。
僕もチームを世界一にする責任があったものですから、彼と話した瞬間、この魂を借りたほうが世界一に近づくと感じて、「源ちゃん、行くぞ。その代わり、俺、源ちゃんが怪我したこと、一切忘れるからいいね」と言葉をかけたんです。源ちゃんはグワーッと号泣して「監督、僕は今回、自分が出て日本のためになろうと思いました。今まで日本代表に選ばれても、なかなか試合に出られなかったので、今回は僕で勝つんだと思ってここに来ました。この思いを遂げさせてください! やらせてください!」と言いました。
あとになってそのことを話したら、「監督のほうが先に泣いていましたよ」って言われました(笑)。僕、そういう選手を見ていると感動するんですよね。
横田 その場面が目に浮かぶようです(笑)。