そのため、管理組合の総会で「今はまだ新築同然で、建物にも劣化は見られないから、今回のところは修繕積立金を値上げしなくてもいいのでは」というような、値上げに悲観的な人にとって耳に優しい意見を言う人がおり、多くの人がその意見に同調すると、修繕積立金は値上げされないまま据え置かれてしまいます。

 そこそこの築年数の中古マンションであるにもかかわらず、修繕積立金があまり高くない場合には、裏にそうした事情が潜んでいる可能性があるので確認が必要でしょう。

 もともと修繕積立期に値上げを前提にしていたにもかかわらず、予定通りに値上げをしなければ、大規模修繕工事の資金は不足します。そうなったとき、とられる対応は2つに分かれます。

 1つは、工事を先延ばしにするというもの。しかし、必要な点検や修繕を行わないと、建物の致命的な劣化を見逃して、後々大事になるリスクがあります。

 もう1つは、工事の直前になって修繕積立金を大幅に値上げしたり、一時金を徴収したりして、帳尻を合わせようとすること。

 たとえば、住戸数が100戸のマンションで修繕積立金が1000万円不足したなら、全戸に10万円ずつ一時金を負担してもらう、といった具合です(※管理費や修繕積立金も、各区分所有者の専有部分の床面積に応じて決定されるのが普通なので、この例は全住戸の専有面積が同じと仮定した場合)。

修繕積立金が月1万円以下の
タワマンは要注意?

 ときには、一時金の金額が百万円単位など、かなり大きくなることもあります。経済状況は人それぞれ異なるので、いくら工事に必要だからと言われても、急に大金の支払いを迫られたら、拒否する人が高確率で出てくるでしょう。

 工事の計画が進みだしてから未回収の一時金が出てしまうと、工事費が不足するため、ますます問題が大きくなってしまいます。そのため、一時金という方法は最終手段と考えなければなりません。

 前述のとおり、大規模修繕工事はおおむね12~18年ほどの周期で実施されます。1回目の工事は、竣工からそれほど時間が経っていないので、通常はそこまで大掛かりにはなりません。しかし、2回目、3回目の工事となると修繕すべき箇所が増え、必要な金額も増えていきます。