12年周期で工事を計画しているケースだと、3回目(36年目)の工事でエレベーターや駐車場などの高額な設備の修繕や交換が含まれてくることが多く、1回目、2回目とは比べ物にならないほど費用が跳ね上がります。
たとえば、エレベーターは1基交換するだけで500万~1500万円程度の費用がかかるのは普通で、超高層のタワマンになると、1基だけで数千万円もかかります。修繕積立金が不足すると、たとえエレベーターが故障しても直せない、といった事態に陥りかねません。
タワマンは修繕工事の費用が普通のマンションよりも高額です。足場をかけて建物全体を工事するということができないので、工事が長期化するほか、前述のエレベーターの例のように、修繕・交換のコストが高いタワマンならではの設備も多いからです。
そのため、タワマンなのに修繕積立金が月1万円以下だとしたら、たとえ面積の狭い住戸であったとしても安すぎます。管理費と同様、修繕積立金が安い=お得というわけではないので、そこから段階的に大幅に値上がりすることを理解しておきましょう。
修繕積立金を払っていても
資金が不足するケースも
また、工事費の高騰などにより、修繕積立金も値上げ傾向にあるため、段階的にきちんと値上げしていても、修繕積立金が不足するケースはあります。根拠となる長期修繕計画自体を定期的に見直すことも重要です。
長期修繕計画は管理会社が作成しますが、マンション管理士などの専門知識を持った第三者が細かくチェックすると、間違いがいくつも見つかるのは“あるある”です。間違いがまったくない計画案のほうが珍しいくらいです。

長嶋修 著
間違いというのは、存在していない設備のメンテナンス代が計上されている、エレベーターの交換費用が1ケタ間違っている、といった単純なヒューマンエラーがほとんどですが、そのせいで工事費用の概算が億単位でずれることもあります。
加えて、長期修繕計画は30年程度先までのことを計画するもので、作成してから時間が経つと、法改正や物価の変動などにより、工事項目やかかる費用が変わってくるのが普通です。そのため、国土交通省は5年程度のスパンで計画を見直すことを推奨しているのですが、これをほったらかしにしているマンションは非常に多いのが現実です。
安心して住めるマンションを見つけるためには、計画の見直しを実行しているか否かを確認すべきでしょう。