とはいえ、今でも潮風にさらされる過酷な環境の中、その躯体を保っているわけですから、鉄筋コンクリート造の建物のポテンシャルが高いことはよくわかります。
ちなみに、日本初の分譲マンションは1950年代から売りに出されるようになりましたが、当時のマンションはいずれも建て替えられています。と聞くと「マンションも戸建と同じように、古くなったら建て替えればいいのではないか」と思うかもしれませんが、マンションの建て替えは戸建ほど容易ではありません。
たとえば、1953年分譲の宮益坂ビルディング(東京都渋谷区)は2020年に建て替えられましたが、建て替えの検討が始まったのは1978年。実際に建て替えすることが決議されたのは2003年。そこからさらに長い年月を経て竣工(しゅんこう)にこぎつけています。つまり、検討開始から実現までに40年以上もの歳月を要したということです。
大規模修繕を希望しない
住人も多くいる
建て替えのハードルが高い理由として、まず区分所有者の負担が大きいことが挙げられます。鉄筋コンクリート造のマンションの建設には、木造の一般的な戸建とは比べ物にならないほど膨大なコストがかかります。よって、建て替えるとなると区分所有者は多額の費用を負担せねばならず、その金額は1戸あたり1000万~3000万円、あるいはそれ以上とも言われます。
老朽化した建物を建て替えるということは、住民の多くも高齢化しているはずです。年金生活の高齢者世帯で、そのような費用を負担するのは難しいケースも多いでしょう。
また、建て替えには区分所有者全体の5分の4以上の賛成が必要です。コストが高いうえに、建て替えとなれば長期で仮住まいに移る必要もあることから、「ボロボロでも、もうトシだしこのままでいい」と考える住民が多数出てくるのも推して知るべしです。
そう考えると、全面的に建て替えるよりは、こまめに修繕しながら住み続けていくほうが現実的ですが、ここ数年で大きな問題となっているのが、修繕積立金が大幅に不足しているマンションが増加していることです。
修繕積立金は、通常12~18年程度のスパンで行われる大規模修繕工事を見据えて費用を大まかに計算し、工事のタイミングに帳尻が合うように住民全員が毎月積み立てていくもの。
金額の根拠となるものは長期修繕計画で、これは管理会社が作成する場合がほとんどです。