あらかじめ費用を計算し、それに基づいて集金する計画になっているにもかかわらず、修繕積立金が不足する要因の1つは、修繕積立金の積立方式にあります。

長期修繕計画がずさんで
修繕積立金が積み上がらない

 修繕積立金の積立方式は、大抵の場合「段階増額積立方式」か「均等積立方式」のどちらかです。

 段階増額積立方式とは、5年ごとなど一定の周期で、段階的に積立金が値上げされるというもの。一方の均等積立方式は、マンションを買ってからずっと同額の修繕積立金を負担していく方式です。

 昔は均等積立方式が主流でしたが、2000年代に入ってからは段階増額積立方式が半数を超えるようになり、新築マンションの多くが段階増額積立方式を採用するようになりました。

 段階増額積立方式のメリットは、初期の修繕積立金が安く抑えられる点です。住宅を購入する人は、基本的にランニングコストをなるべく安くしたいと考えています。一方、マンションを売る側は、なるべく多くの購入希望者を獲得したいと考えているため、当初の修繕積立金を安くすることで、ランニングコストが安いように見せかけます。

 あるマンションでは、30年のスパンの長期修繕計画を立案。途中2回の大規模修繕工事を実施する計画で、当初の修繕積立金を月7000円と設定しました。金額は5年ごとに増額され、最終金額は月2万8000円まで上昇します。

 仮に、同じマンションで均等積立方式を採用していれば、積立額はずっと約1万9000円です。つまり、本来なら毎月2万円近く払わなければならないところを、5年間は7000円しか負担せず、毎月1万2000円の赤字を全住戸で先送りにするわけです。

 修繕積立金が毎月1万9000円のマンションと7000円のマンションでは、後者に魅力を感じる人がどうしても多くなるでしょう。5年ごとに大幅な増額があることを理解したうえで選択するなら問題ないのですが、厄介なのはきちんと認識しないまま、足元の安さだけにひかれて選択している人が数多く存在していることです。

大規模修繕の資金不足で
とられる対応は2つ

「理解していなかったといっても、それで買ったほうが悪いのだから、どうにかして払うしかないだろう」と思われるかもしれませんが、段階増額積立方式だからといっても値上げに強制力はありません。