この回の演出は誰?
当てるのもドラマの楽しみ
電報が届いた、と健太郎(高橋文哉)が血相を変えて駆けてきた。
もしかして召集令状?と思ったら、
「チチキトク スグカヘレ」
千尋(中沢元紀)からの、寛(竹野内豊)、危篤の報であった。往診の最中、急に倒れてしまったのだ。なんだか最近、食欲なく元気がなかった寛。これぞ医者の不養生。
でも嵩はまず絵を仕上げようとする。「そうしないとおじさんに顔向けできない」と懸命に描き続ける。
一晩中描いて朝が来て。最後、水入れに溶いた絵の具はオレンジ。朝焼けというよりは夕焼けの色のようだ。このシーンに時間と気合をかけているようで、青とオレンジの水入れが光に照らされた画がすてきだった。
タイトルバックで確認し忘れて、今週の演出は誰だろう、野口雄大さんかなと思ったら、見返したらやっぱりそうだった。根拠は、何か画にひと手間かけようとしている気持ちが伝わってくるから。蘭子(河合優実)と豪(細田佳央太)の回もそうだった。これは若手スタッフに見られる傾向だ。演出が誰か当てるのもドラマの楽しみのひとつなのだ。
野口さんは2023年、『さまよえ記憶』で映画監督デビューしている。「大切な人を失った時、人はその悲しみとどう生きるのか」をテーマにした繊細な作品だった。NHKではこれまで大河ドラマ『どうする家康』、朝ドラ『エール』、よるドラ『恋せぬふたり』などを担当してきた。これから期待の演出スタッフである。
閑話休題。銀座のネオンに照らされたオレンジの顔をした人々の明るい絵ができあがった。これは「アンパンマン」のオレンジ色を彷彿とさせる。
「この作品の提出をもって本校の課程を終了と認める」と労う座間(山寺宏一)の声がイケボ。改めて、山寺宏一の声ってかっこいいなあと思う。
そして、嵩はのぶにも負けないような猛ダッシュをして、列車に乗り込み、御免与町を走って柳井家に到着した。列車のなかで手を絞っているとき、絵の具がついているところは芸の細かさ。
しかし、ときすでに遅く寛は息を引き取っていた。