「写真一枚で心をさらう」って、こういうこと。→のぶに迫る“折り目正しい”求婚者【あんぱん第39回レビュー】『あんぱん』第39回より 写真提供:NHK

日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月から金曜までチェックし、当日の感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年続けてきた著者による「見なくてもわかる、読んだらもっとドラマが見たくなる」そんな連載です。本日は、第39回(2025年5月22日放送)の「あんぱん」レビューです。(ライター 木俣 冬)

古めかしい求婚の言葉が
令和のいまだから新鮮

「生涯の伴侶になってくださいませんか」

 のぶ(今田美桜)の見合い相手・若松次郎(中島歩)が求婚。「生涯の伴侶」という古めかしい言葉が令和のいま、逆にキュンとなる。他局で放送中の「波うららかに、めおと日和」(フジテレビ)でも戦前、海軍中尉(本田響矢)と交際ゼロ日婚したヒロイン(芳根京子)の話が古めかしく奥ゆかしく、それがエモいと注目されている。生真面目なものが新鮮に映るのだろうか。

 ここからは順を追って第39回を見ていこう。

 朝、のぶが起きると、釜次(吉田鋼太郎)が豪(細田佳央太)の墓石を彫ろうとして、「わしには彫れん」とうなだれていた。豪の死は朝田家には大打撃。ところで、足摺岬にひとりで住んでいるという豪の祖母はどうしているのだろうか。

 のぶは数日、休んで学校に復帰。校長先生(中尾隆聖)も豪は「英霊」になったとねぎらった。子どもたちは元気にお国のために勉強に励んでいる。それを見ながら、蘭子(河合優実)の嘆きが頭をよぎり、のぶは、ほんとうにこのままお国のためと妄信して進んでいいのだろうか、と迷っているふうに見える。