わたしたち年寄りは、昔の俳優を知っていることがほのぼのとうれしいのであり(自慢ではない)、なんだか得をしている気分なのである。
現在でもトム・クルーズやジョニー・デップ(古いか)やディカプリオらがいるが、昔のような世界的俳優はいなくなった。
世界がばらばらになったのである。
人も宗教も国も、自我を主張するだけで、ただばらばらになっただけである。
度肝を抜かれた
重厚な韓国映画
映画は昔がよかったとはいえない。まず映画を見る環境も媒体もまったく変わってしまった。
タバコの煙が立ち込めたり、前の座席に座高の高いやつが座るとスクリーンが見えなかったり、狭い座席にすし詰めにされたりと、劣悪だった映画館は、いまや比べ物にならないほど快適になった。
それに昔は、映画を見るには映画館に行くしかなかったが、いまではDVDや映画配信サービスで、家でも見られるようになった。
映画そのものも変わった。
アニメなど、ジャンルが拡大された。動画配信会社が巨額の製作費をつぎこんで映像をつくるようになった。
昔の映画にも名作はたくさんある。
だが、全体的にいえば、質量ともに現在が昔を上回っていると思われる。

勢古浩爾 著
VFXやSFXやCGの技術も目を見張るものがある。
わたしが目を開かされたのは、韓国映画のなかの、一部の犯罪映画と社会派映画である。度肝を抜かれたといっていい。『定年後に見たい映画130本』(平凡社新書、2022)以後に見て、感銘を受けた韓国映画を挙げておこう。
「インサイダーズ 内部者たち」「ザ・キング」「無垢なる証人」「マルモイ ことばあつめ」「幼い依頼人」「国家が破産する日」「V.I.P. 修羅の獣たち」「国際市場で逢いましょう」「ありふれた悪事」「華麗なるリベンジ」などである。
しかし俳優の名前をなかなか覚えられない。最近やっと覚えたのは、『ソウルの春』のファン・ジョンミン、ドラマ『ミセン―未生―』や『記憶~愛する人へ~』のイ・ソンミン、『権力に告ぐ』のチョ・ジヌンである。