スタートアップ起業家でもサラリーマン社長でもない第3の道、サーチファンドの定義と投資プロセスを徹底解説写真はイメージです Photo:PIXTA
*本記事はきんざいOnlineからの転載です。

M&Aを通じた起業家精神の実現

 2014年に日本に「サーチファンド」が上陸して10年が経過した。20年前後にはサーチファンド投資家も増え始め、日本のサーチファンド市場は黎明期から発展期に差し掛かろうとしている。本連載では、サーチファンドの基本的な仕組みや日本における市場動向、サーチャー・投資家の役割、サーチファンド・ジャパンで支援をしているサーチャーの具体事例に加え、それらを踏まえた業界の展望を全6回にわたり解説する。

 サーチファンドとは、サーチャーと呼ばれる個人が、投資に値する非上場企業を探索して選定した企業にM&Aを行って経営するために、投資家から資金調達をする投資ビークルのことを指す。この仕組みは「M&Aを通じたアントレプレナーシップ(起業家精神)」(Entrepreneurship Through Acquisition)を実現するもので、スタートアップ起業家やサラリーマン社長とは異なる「経営者への道」を提供するものと位置付けられ、プライベートエクイティー(PE)投資の一種とされている。

 サーチファンドという言葉は、1984年にハーバードビジネススクールが初めて使用したとされている。その後、スタンフォード大学ビジネススクールを中心に広まり、世界中の起業家やビジネススクールにおいて一般化していった。グローバルにおいてサーチャーは、ビジネススクールの卒業生であるMBAホルダーにとって、アントレプレナーシップを発揮するキャリアとして主要な選択肢となっている。