「口を開けば会社の愚痴ばかり」「なぜか毎年人が辞めていく」「職場での雑談がない」
具体的な問題があるわけではないけれどなぜか居心地が悪く、モヤモヤする職場になっていないだろうか。そんな悩みにおすすめなのが、組織開発というアプローチだ。『いちばんやさしい「組織開発」のはじめ方』(中村和彦監修・解説、早瀬信、高橋妙子、瀬山暁夫著)では、職場のモヤモヤに効く組織開発のはじめ方を成功事例とともに紹介している。本記事では、職場にありがちな悩みについて、組織開発の専門家がお答えする。(取材・文 間杉俊彦、企画 ダイヤモンド社書籍編集局)

Q:パワハラが怖くて部下への指導ができません
新入社員にはパワハラと捉えられることを恐れて指導できず、上司からは目標達成を迫られます。組織のクッション役を担う中間管理職ですが、もうつぶれそうです…。
A:「どうしよう」の共有が管理職を開放する
管理職の板挟み問題には上層部の責任も大きいと言えます。ある管理職経験者は「無理な仕事を部下に振らない」という姿勢を貫いたため、部下が安心して働ける環境を作ることができた、と振り返ります。
ここで重要なのは、管理職を管理する立場にある部長と、より現場に近い管理職である課長の関係性です。課長は部下一人ひとりと向き合わなければならないのに対し、部長は課長をどう支援できるかを考えることが本来の役割です。
板挟みの構造を変えるには、課長の位置づけを「チームの一員」として捉え直す視点が必要です。上から無理な仕事が降ってきたとき、課長がそこで悩んで抱え込むのではなく、率直にチーム全体に共有し「こんな仕事が来たけどどうしよう」とチームメンバーに相談することができれば、上司vs部下の様相が変わります。
課長をタテ方向の指揮命令系統の中間にいる人、と捉えると板挟みになりますが、チーム運営のためのリーダーシップをとる一員だと考えることで、単なる情報の関所ではなくチームメンバーとして位置づけが変わるのです。
経験から学ぶ「ヨコのつながり」の重要性
また、重要なのは部長とのタテのつながりだけではありません。
興味深いことに、課長になったばかりの若手管理職ほど板挟み状態に苦しんでいるという傾向があります。一方で、困っていない課長もいる。それはベテラン課長たちです。
問題は、そうしたベテラン管理職と若手管理職に、ヨコのつながりがないことです。日本の組織はタテ割りなので、モデルとなり得るヨコの先輩管理職から学ぶ機会が少ないのが現状なのです。
マネジメント力を向上させるためのトレーニングは、OJTが最も効果的だと言われています。とりわけベテラン課長からの学びは、とてもパワフルです。
組織開発の実践の中には、マネジャー同士の「振り返り会」に活動全体の3分の1ほどの時間を使っている例もあります。
ある企業事例では、マネジャー層がヨコの連携をとって、成功パターンだけでなく失敗体験も積極的に共有し、自分たちのやり方を一緒に考えていくことで、組織の活性化に成功したといいます。
「点」ではなく「面」の時代
このように、組織開発の視点から考えると、板挟み状態の解消には「管理職の孤独」を解消し、マネジメントを「点」ではなく「面」で捉え、チームプレイとしてマネジメントを捉える発想の転換が必要です。
個々の管理職の奮闘だけでなく、組織文化として「学び合い、支え合う管理職コミュニティ」を作ることこそ、タテ割りが強い日本の組織で求められていることかもしれません。
管理職はタテの関係だけでなく、ヨコのつながりの中で成長し、マネジメントという専門性を磨いていく――そんな視点が、「板挟み管理職」を救う処方箋となるのではないでしょうか。
■参考記事:いつまでも自走できない部下の育成、二流の管理職は「自分が育てる」、では一流は?
(本記事は、『いちばんやさしい「組織開発」のはじめ方』の著者によるオリジナルコンテンツです)