次に取り上げたいのが楽天グループです。今回、小泉農水大臣が備蓄米の販売方式を変更する直前に会っていたのが楽天の三木谷CEOでした。備蓄米をインターネット通販することによって既存流通の停滞をなんとかしたいという視点で両者の思惑が一致したのだと思われます。

 楽天の申し入れは1万トン。インターネット通販は成長しているとはいえ、日本の小売流通全体に占めるアマゾンや楽天など通販の比率はまだ1割程度(経済産業省「令和5年度電子商取引に関する市場調査」)。翌日におっとり刀で申し込んだイオンが2万トン、イトーヨーカドーが5000トンですから、楽天としては思い切った量の入札です。

 実はここ数年、楽天でコメを買う日本人はハイペースで増えています。理由はふるさと納税です。コメはふるさと納税の人気商品ジャンルであるうえに、楽天などインターネットサイトでふるさと納税すればポイント還元が得られるとあって人気になりました。

 ただ、この人気は今年の10月にふるさと納税でのポイント還元が禁止されることで下火になるかもしれません。それを補う戦略として、なかなか市場に出回らない備蓄米を楽天市場で販売するのは、顧客の引き留め策としては一定の戦略効果がありそうです。

 ただ消費者としてはコメの置き配だけは勘弁願いたいものです。周辺地域の治安が悪化しそうですからね。

 さて、今回の当日入札組の顔触れを眺めると、コメ流通の覇権を争う2大新勢力が目をひきます。激安スーパー陣営としてオーケー、ドン・キホーテ、肉のハナマサなどの顔触れが並ぶ一方で、食品流通の新勢力陣営からはサンドラッグ、カインズ、そしてダイシンやユニディを傘下に抱えるアイリスオーヤマが名乗りを上げています。

 2大新勢力と申し上げた前提として、もうひとつ、3つめの極となるのが旧勢力としての老舗スーパーです。その象徴が翌日にゆったりと申し込んだイオンでありイトーヨーカドーだということです。

 旧勢力から見ればコメが不足するとはいっても消費者は4500円の米を仕方なく買ってくれている。そこにわざわざ古古米を2000円で配置するインセンティブはあまりないかもしれません。むしろJAがこれから放出しはじめるであろう3500円の2024年産備蓄米が棚に並んでいたほうが商売としては好ましいと考えるかもしれません。