成田空港の重要性が高まり
輸送能力の抜本的増強が急務

 2024年の訪日外国人旅行者数は過去最多の3686万人を記録し、2025年は4000万人を上回る見通しだ。観光庁のインバウンド消費動向調査によれば、2023年の訪日外国人空港別入国者数割合は、中国が成田36.7%、羽田18.2%、台湾が成田28.9%、羽田10%、韓国が成田19.8%、羽田5.4%で、いずれも成田が上回る。訪日外国人の6割を占める東アジアからの旅行者にとって、成田空港の重要性は高まるばかりだ。

 政府は2030年に6000万人の受け入れを目標に掲げており、そのためには首都圏空港機能の強化が不可欠だ。羽田空港再国際化では成田空港の地位低下が危惧されたが、成田国際空港株式会社のデータによれば、国際線利用者の日本人と外国人の比率は、2015年度は5対5だったが、2023年度は3対7まで増加しているという。

 現在、羽田空港の発着回数(国内線含む)は年間約49万回、成田空港は約34万回だが、羽田空港には拡張の余地がほぼない。5本目のE滑走路増設が検討されているが、実現したとしても2040年代以降の話だ。

 国土交通省は「今後、首都圏空港の更なる需要は成田空港で受け入れる」方針だ。発着回数50万回を実現するため、2019年にB滑走路の延伸工事とC滑走路新設工事の基本計画を取りまとめ、今年5月25日に着工。2028年度末の供用開始を予定している。

 並行して成田空港の機能強化をめぐる議論は活発化している。2022年10月には、学識経験者、国、県、地元市町で構成する「『新しい成田空港』構想検討会」が設置され、旅客ターミナルの再構築、航空物流機能の高度化、空港アクセスの改善などを議論した。その後、成田空港会社の検討深度化を経て2024年7月に「とりまとめ2.0」を発表した。

 これを受けて国交省は同年9月に「我が国の国際競争力を確保するためには、これとあわせて国際ハブ空港としての成田空港の競争力の維持・強化を進めていくことが必要不可欠」として、「今後の成田空港施設の機能強化に関する検討会」を設置し、鉄道アクセスなど今後の成田空港の施設面での機能強化を検討中だ。