このように、各段階において適合がズレるポイントには、それぞれにありがちな落とし穴があります。これらを事前に理解し、チーム全体で共有しておくことが、失敗の再現を防ぐうえで大切です。

日本企業で「適合ミス」が
起きやすい構造的な要因

 適合の4段階は、プロダクトや事業を前に進めるための地図のようなものです。ところが実際の現場では、この地図が存在しないかのように、目的地までの道筋が曖昧なままプロジェクトが進んでしまうケースが少なくありません。

 特に日本企業では以下のような構造的な要因から、適合ミスが起きやすい土壌が存在します。

・社内評価の重視と「既存事業の重力」

 新規事業においても、既存事業と同じ評価軸が適用されがち。短期間での売上や利益、既存顧客の反応といった定量的な成果が求められ、CPFやPSFのような定性的かつ不確実な検証が軽視される傾向がある。その結果、市場ではなく、社内に向けたプロダクトが生まれやすくなる。

・ウォーターフォール的な思考の強さ

 要件定義から設計、開発、導入へと一直線に進むウォーターフォール型の開発プロセスが、今なお根強く残っている。そのため、途中で仮説を見直したり、立ち戻ったりする柔軟性に乏しくなりやすい。CPFやPSFの段階で違和感があっても、「とりあえず最後まで作ってしまおう」となりやすい構造が、適合ミスを固定化させてしまう。