
マイクロソフトやグーグルでエンジニアとして活躍し、複数の企業で技術顧問を務める及川卓也氏は「大企業で新規プロダクトがなかなか成長しないのは『社内ガラパゴス化』のせい」という。及川氏が、新規プロダクトを成功させるにあたっての企業の課題を取り上げ、どのような戦略を取るべきか、考察していく。
なぜ大企業の新規プロダクト創出は
うまくいかないのか?
最近、進化論に関する本を読んで知ったのですが、チャールズ・ダーウィンは「進化」に「進歩」の概念を含めていなかったそうです。彼の進化論は「環境の変化に適応したものが生き残る」というもの。進化とは「より良くなる」ことではなく、環境に適応することに過ぎないのですが、のちに文化論的に独自の解釈が加えられ、「進化=進歩」という誤解が生まれました。
ダーウィンの進化論で有名なガラパゴス諸島では、独自の環境に適応して他地域の生態系とは異なる進化を遂げた固有種が観測できます。これになぞらえ、国際標準とは異なる独自の道を歩む日本の産業や技術のことを、かつては自嘲気味に「ガラパゴス化」と呼ぶことがありました。しかし、最近ではその表現も聞かれなくなっています。ガラパゴス化と呼べるほどの独自進化すら起こらなくなり、日本の大企業は、今では単にグローバル市場の変化についていけなくなっているだけ、という気もします。