
マイクロソフトやグーグルでエンジニアとして活躍し、複数の企業で技術顧問を務める及川卓也氏は「新規事業の多くが“ごっこ”で終わってしまう」と指摘。及川氏が「成長する新規プロダクト事業を生み出すための組織」をテーマに、持続的なイノベーションを可能にする組織体制について解説する。
なぜ新規プロダクト事業は
“ごっこ”で終わるのか?
新規事業に取り組む企業は年々増えています。多くの企業が「イノベーション」を掲げ、社内コンテストの開催やオープンイノベーションの推進、新規事業専任チームの設立など、さまざまな施策に取り組んでいます。しかし、その多くは本格的な成長に至ることなく、形だけの「新規事業ごっこ」で終わってしまいます。
前回の記事『「社内ガラパゴス」が新規プロダクトを殺す…大企業の成長ブレーキを外す方法』では、多くの企業の新規事業が社内の論理に最適化されて市場に適応できず、成長しない構造的な問題を指摘しました。社内では評価されても外部の市場では競争力を持てない新規プロダクトが生まれ続けるという「社内ガラパゴス化」は、企業の成長を阻む要因となっています。
「社内ガラパゴス化」という表現は、厳しく、あるいは挑発的に聞こえるかもしれません。しかし、実際に筆者がさまざまな企業の現場を見てきた中では残念ながら、新規事業に取り組む企業の多くが表面的な活動にとどまり、実際の成果に結びつけられていないのが現状です。
これは単なるリーダーシップ不足や戦略ミスによるものではなく、組織の構造そのものに新規事業を成功させにくい要因があるために起こる問題です。