
人手不足の昨今、勤務・労働条件が厳しい職種では、ネガティブなイメージの払拭が急務。社員のやりがいアップと顧客満足度アップを同時に達成する岐阜の廃棄物処理企業・名晃は、その先進事例かもしれない。80代女性社長が実施しているブランディング術を紹介する。※本稿は、峠テル子『ゴミに「ご苦労様でした!」感謝の心で育む人的資本経営』(PHP研究所)の一部を抜粋・編集したものです。
お客様にお願いをするときは
相手のメリットから話を進めよう
大和清掃(編集部注/1970年に筆者が夫とともに創業した清掃会社)を起ち上げて間もない頃、私もゴミ収集の現場に手伝いに行ったことがある。産業廃棄物には当時からいろいろな種類があって、お客様ごと、扱うものによって収集の難易度や苦労が異なる。
たとえばインテリアを扱うお客様。不要になったカーテンのロールがゴミ置き場に投げ入れられていた。何本もただ投げ入れていると、カーテンが無秩序に絡まって、引っ張っても足で踏んでも取れなくなってしまう。力があるとかないとかいう問題ではなく、とにかく取れないので収集にとても時間がかかる。
こういった場合は、お客様に廃棄場への置き方に注意していただくのがいちばんの改善策だが、お客様に「こうしてください」とお願いするのはなかなか言い出しにくいものだ。
そこで、名晃では社内で「環境アドバイザー」という資格を設定することにした。廃棄物に対する幅広い知識や技術について学んだ社員を、環境アドバイザーとして認定するのである。
先の例では「このカーテンは廃棄するときに、こうやって向きを揃えて入れれば、今の量の3倍はこの廃棄場に入りますよ」とお伝えすると、お客様も快く協力してくれる。お客様も廃棄物の量が減ったように感じるし、うちも収集がしやすくなる。