「何ですか、それ?」社員総スカンでも社長が押し切った「7文字のあいさつ」写真はイメージです Photo:PIXTA

仕事をする上であいさつは基本中の基本だが、ゴミにまであいさつをしている会社がある。それが、峠テル子が社長を務める名晃である。「自分はどうせゴミ屋だから……」と投げやりな社員ばかりだった会社を変革した、80代女性社長の独特な経営方針と人材育成術に迫る。※本稿は、峠テル子『ゴミに「ご苦労様でした!」感謝の心で育む人的資本経営』(PHP研究所)の一部を抜粋・編集したものです。

笑顔で!大きな声で!
ゴミにあいさつをしなさい!

 あいさつをするのは最低限のマナーで、ごく当たり前のこと。それだけで喜んでいるわけにはいかない。

 私は「この子たちを名晃で不幸にしてはいけない。ケガや病気にさせてはいけない」という一心で(編集部注/かつての名晃の社員は勤務態度が悪く、収集中のゴミを足蹴にしてケガを負う者が続出していた)、何かいい方法はないかと考え続けた。そこで思いついたのが「ゴミに対して感謝する」というものだった。ゴミを扱うことを仕事にしているのだから「廃棄物に対して『ご苦労様でした』と一礼してから手をつけてください」と指導を始めたのだ。

 これに対して反発は大きく「何ですか、それ?」と誰もやろうとしない。私も何度も言い続けたし、ついには自分の車で収集車の後ろについていって、「『ご苦労様でした』と言って、頭を下げてください」と促した。

 そこまでしても、なかなか声に出して「ご苦労様でした」と言う社員はいない。それはそうだろう。これまでも言ったことがないし、ゴミに対して感謝の気持ちを少しも持っていないのだ。

 彼らにとって、ゴミは自分たち以下のどうしようもない存在なのである。そのゴミに対して頭を下げて感謝しなさいと言われても、「何のこと?」とまったく理解できない。