
発達障害のある親の中には、コミュニケーションの難しさが不適切な関わりにつながることがある。特に“性”にまつわる問題は、親側に悪気や自覚がないゆえに、より一層深刻みが増しているという(注:発達障害者が必ず子どもに虐待をしてしまうということでは決してない。発達障害のある親でも、懸命かつ適切に養育をしている者がほとんどである)。※本稿は、橋本和明『子どもをうまく愛せない親たち 発達障害のある親の子育て支援の現場から』(朝日新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。
中2の娘と一緒に
風呂に入る父親
発達障害のある親の中には、コミュニケーションの難しさが不適切な関わりにつながることがある。それが性にまつわる問題となるとなお一層やっかいになってしまう。
Gさんは中学校2年生の女の子を持つ父親である。娘はすでに初潮も迎え、胸も少しふくよかになっていた。しかし、Gさんはまだ娘と一緒に風呂に入り続けている。娘は、父親が嫌いではなかったが、この年齢で父親と一緒に風呂に入ることはさすがに嫌で、「入ってこないで」と言っていた。
しかし、父親Gさんはそんなわが子の発言など意に介さず「なぜ入ってはいけないの。これまでも一緒に入っていただろう」と平然と入ってくるのであった。そのGさんの言い方は、自分はまったくおかしなことを言っているわけでもなんでもなく、そう考えるのが当然ではないかというような印象さえ受けた。
このケースの結末は、娘が同級生にこのことをそれとなく話したことが担任の先生に伝わり、児童相談所に性的虐待として通告された。