中之条研究では、同じ地域の住民を長期にわたって調査したことで、住民たちの身体活動と健康の関係性がはっきりと示されることになりました。このような研究はあまり例がありません。そのため、中之条研究の成果は「奇跡の研究」「中之条の奇跡」とも呼ばれています。
この研究の最大の成果は、1日の歩数と中強度活動時間に対する病気の関係が明らかになったことです。
病気にならない長生き歩き
「1日8000歩」がもっとも効果的だった!
歩数だけを見ると、1日8000歩が、病気の予防効果がもっとも高く、それ以上歩いても効果はほとんど変わりません。つまり、これまでよくいわれていた「1日1万歩」にはあまり根拠がないということになります。
ただ、8000歩を漫然と歩いても病気は予防できません。なぜなら、中強度活動が含まれていないからです。
これは身体活動計を用いた調査で初めてわかったことです。身体活動計を365日装着してもらうことで、1日の歩数と中強度活動時間の関係が明らかになります。その結果、歩数と中強度活動時間が増えるにつれて、いろんな病気の予防効果が高まることがわかりました。
たとえば、「4000歩/中強度活動5分」では、うつ病が予防できます。「5000歩/中強度活動7.5分」では、認知症や心疾患、脳卒中などの病気が防げます。「7000歩/中強度活動15分」では、がん、動脈硬化、骨粗しょう症、便秘が防げます。
そして「8000歩/中強度活動20分」では、高血圧症や糖尿病、脂質異常症などの病気が予防できます。つまり「8000歩/中強度活動20分」で、高齢者がかかりやすいほとんどの病気が予防できるというわけです。
これらの病気が予防できれば、死亡のリスクも下がります。これが「8000歩/中強度活動20分」を「長生き歩き」と命名した根拠です。
健康長寿は歩くこと(運動)だけでは達成できません。もう1つ、大事な要素があります。それは普段の食事(栄養)です。
中之条研究に参加している高齢者は、定期的に血液検査を受けています。その検査項目の1つに血清アルブミン値があります。