ニュースな本写真はイメージです Photo:PIXTA

真面目なエリートサラリーマンが、会社のためにと悪事に手を染めて逮捕され、お先真っ暗に……。「近畿日本ツーリスト」と「かっぱ寿司」という、誰もが知る大企業で起きた実際の犯罪について紹介しよう。次に逮捕されるのは、真面目なアナタかもしれない!?※本稿は日本経済新聞「揺れた天秤」取材班『まさか私がクビですか?なぜか裁判沙汰になった人たちの告白』(日本経済新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。

社内表彰を受ける
優秀な社員であったが……

「仕事が全くない」。新型コロナの感染拡大から1年が過ぎた2021年、近ツーの大阪市内にある支店で営業課長だった男(55)は焦燥に駆られていた。

 売り上げの大半を占めた旅行需要は蒸発。前年は「GoToトラベル」に沸く時期もあったが、寄せては返す感染拡大の波に翻弄される日々は終わりが見えなかった。

 入社は1992年。バブル経済の崩壊後、羽振りのいい社員旅行などが消えゆく逆境を営業ひと筋で支えてきた自負があった。それでも、売上高が前年度から8割ほど減るコロナ禍は特別だった。社内を閉塞感が覆い、苦楽をともにした同僚たちが次々に職場を去っていく。

 なすすべはなく、会社人生で最大の危機を迎えていた。

 ひと筋の光明は、日本中の自治体が外注していた感染対策などのコロナ関連業務だ。以前から自治体業務を受託していた近ツーの社内でもこの時期、とりわけ重要視されていた。

「細かな事務作業は苦手だが、発想力で突破する。意欲も営業力もある」。