AI投資を延命させる“期限なき恐怖”、最先端AI「ミュトス」が開くサイバー防衛神話Photo:PIXTA

アンソロピック(Anthropic)のAIモデル「クロード・ミュトス(Claude Mythos)」は、未知の脆弱(ぜいじゃく)性を発見する能力を示し、企業に新たな防衛投資を迫り始めた。AI攻撃にはAI防御で対抗するしかないという恐怖は、過熱するAI投資をさらに延命させるのか。2000年問題との違いから考える。(BNPパリバ証券経済調査本部長兼チーフエコノミスト 河野龍太郎)

AI防衛投資を生む
「期限なき恐怖」

 最近、アンソロピック(Anthropic)のクロード・ミュトス(Claude Mythos)が話題だ。

 ミュトスが示したのは、AIがもはや単なる知識労働の補助ツールにとどまらず、サイバー空間における脆弱性の発見や攻撃可能性の探索に深く踏み込み始めたという現実である。

 もし、AIが未知の脆弱性を高速で発見するのなら、国防のみならず政府・企業、とりわけ金融機関や重要インフラを担う部門は、防御として高度なAIを導入せざるを得ない。エコノミストとしては、既に過熱傾向にあったAI投資をさらに積み上げるための新しいロジックが生まれたのではないかと、危惧している。

 Mythosとは、ギリシャ語に由来する「神話」を意味する言葉だ。アンソロピックがその名を与えたAIモデルは、サイバー防衛のための新しい能力を示すものだが、それは同時に、AI時代の「新しい神話」の名称となるのだろう。

 これまでAI投資は、「生産性革命」や「人手不足の解消」「科学的発見の加速」といった明るい神話によって正当化されていた。だが、ミュトス以降は、そこにもう一つの強力な神話が加わる。「AIでなければ、AIによる攻撃を防げない」というサイバー防衛の神話である。

 次ページでは、そうしたサイバー防衛の神話の登場がAI投資に与える影響について考察する。