半夏生建仁寺の塔頭「両足院」(東山区)の半夏生 写真提供:両足院

梅雨入りは、少したってからこのあたりと気象庁が発表するものです。京都も傘マークの日でいっぱいですね。今回は、雨の日にこそ美しさが増す水辺の彩り「半夏生(ハンゲショウ)」「花菖蒲(ハナショウブ)」の京都の名所をご案内します。雨音に耳を傾けながら、室内で楽しめるアート展もご紹介しましょう。(らくたび、ダイヤモンド・ライフ編集部)

花ではなく葉をめでる植物「半夏生」

 6月1日は衣替えの日。制服も夏服になります。らくたび京町家でも衣替えの日を迎える少し前に、ボランティアの方々にも協力していただき、恒例の「しつらえ替え」を行います。

 京都は、北山、東山、西山と三方を山々に囲まれた盆地ですから、冬は底冷えの寒さ、夏は際限なき蒸し暑さに見舞われます。この蒸し暑さをやわらげるため、ふすまを簾戸(すど)に替え、畳の上に網代を敷いて夏仕様に。見た目に涼やかであるのはもちろんのこと、簾戸を通り抜ける風が涼を運んでくれますので、機能性も抜群。毎年この時期になると、いにしえ人が生み出した知恵にあらためて感服させられます。

京町屋らくたび京町家(中京区)も夏仕様に

 この季節、二十四節気では、畑に穀物の種をまき、水を張った田んぼに苗を植える「芒種(ぼうしゅ)」と、一年で最も昼の時間が長くなる「夏至」の間。二十四節気をさらに三分割する七十二候では、夏至の終わりに「半夏生(はんげしょうず)」があり、見頃を迎えるその時期が名前の由来となる珍しい植物「半夏生(ハンゲショウ)」をご紹介しましょう。

「半夏生」は、湿地や水辺に自生するドクダミ科ハンゲショウ属の多年草。白くて細長いかれんな花穂よりも、葉の風情に人々の目が向けられがちな点は、どこか小さな花ではなくガクが変化した装飾花をめでるアジサイと同様の個性派植物です。冬の間は土の中で地下茎を伸ばし、春になると芽吹いて緑の葉を広げるようになります。花穂がつく頃、緑色の葉の半分が白色に変わっていく性質をもつことから、「半化粧」という文字も当てられます。

半夏生緑色の葉の半分ほどが白くなる摩訶(まか)不思議な植物「半夏生」 写真提供:両足院

 京都を代表する半夏生の名所は、京都最古の禅寺である建仁寺の塔頭(たっちゅう)両足院(りょうそくいん)でしょう。室町時代の1358(延文3)年、建仁寺第35世龍山徳見(りゅうざんとっけん)が開いた知足院にはじまる名刹で、京阪本線「祇園四条」駅から歩いて7分ほど。建仁寺境内の東側に門を構えます。

 普段は神使の狛虎が立つ毘沙門天堂にのみお参りでき、堂内は非公開となっていますが、半夏生の見頃に合わせて特別公開されます。今年は6月1日(日)から 7月13日(日)までで、会期中は無休です。書院のほの暗い空間越しに一望する半夏生の群生は、他では経験できない幽玄な世界。池泉回遊式庭園を散策しながら、より近くで観賞することもできますが、こちらは庭園の環境保全のため、午前のみの3部制、各回先着20人の事前予約制です。 

 公開期間中、世界的に活躍する藍師・染師BUAISOUの「縄夏⽣:BUAISOU展覧会」も開催されます。「藍染め」と「型染め」という日本古来の二つの伝統技術に新しい感性を吹き込んで生みだされた、掛け軸、ふすま絵、のれんなど約15点が展示されています。庭園の半夏生とアートとの共鳴を感じてみてはいかがでしょう。園内の茶室「臨池亭」には、展覧会に合わせて藍で染め上げた特製の畳や垂幕、のれんなどを設置。呈茶や茶会も行われますので、五感が潤うひとときが過ごせそうです。

緑と白のコントラスト緑と白のコントラストが鮮やか。この景色に会えるのは、1年のうち梅雨と重なる約1カ月間だけ 写真提供:両足院
縄紋段型染縄または糸をパターンとしてリピートすることにより、何を生み出せるのかを試みたという「縄紋段型染」の作品群(作画・染:楮覚郎/BUAISOU) 写真提供:BUAISOU