七段花"三室戸寺(宇治市)で出合った “幻の紫陽花”「七段花」

6月の別名は水無月(みなづき)。梅雨入りも間近、雨に潤んで七色に輝くアジサイ(紫陽花)が見頃を迎えます。気軽に見られる街なかの隠れスポットから、わざわざ足を運びたい壮観な眺めの名所まで、さまざまな紫陽花の見どころをご案内。気分も湿りがちなこの季節の清涼剤、色とりどりの紫陽花を眺めてリフレッシュしましょう。(らくたび、ダイヤモンド・ライフ編集部)

必見!烏丸通の街中「紫陽花スポット」

 京の街中でも、ツバメの親鳥が軒下にしつらえた巣にいそいそとエサを運ぶ姿をよく見かけるようになりました。近畿地方の今年の梅雨入り予想は6月上旬。昨年は6月17日頃に梅雨入りし、7月18日頃に明けました。平年は6月6日頃ですから、今年は例年並みになりそうです。平年の梅雨明けは7月19日頃ですから、レイニーシーズンは1カ月半続くことになりそうです。

 梅雨といえば、雨にしっとりと濡れた路地に鮮やかに映えるアジサイ(紫陽花)の季節です。酸性の土で育つとブルー系が濃く、アルカリ性の土で育つとピンク系が濃くなるのだとか。色が少しずつ変わっていくことから、「移り気」という花言葉もあるようです。

 日本の原生種はガクアジサイ(額紫陽花)で、花びらに似たガクが大きく発達した「装飾花」が、小さな「真花」のまわりを額縁のごとく囲むことから、そのように呼ばれています。現在では、品種改良により進化を遂げた手まりのような西洋紫陽花のほうが、なじみ深いかもしれません。

 西洋紫陽花は、装飾花がほとんどを占め、真花の存在はたいへん控えめ。西洋紫陽花を「大輪の花」と表現するのを時々見かけますが、厳密に言えば、「大輪の花」ではなく「大輪のガク」であるわけです。

日本の原生種「額紫陽花」。真ん中にある粒状の小さな花が真花日本の原生種「額紫陽花」。真ん中にある粒状の小さな花が真花

 ……それはさておき。さっそく京都の梅雨を彩る紫陽花めぐりへと参りましょう。まずは、気軽に立ち寄れて、しかも朝から夜まで無料で見られる穴場スポットから。地下鉄の烏丸線と東西線が交わる「烏丸御池」駅の南改札口直結の「新風館」です。1926年築の旧京都中央電話局の建物と、建築家の隈研吾氏がデザイン監修を手がけた2020年築の建物からなる複合商業施設です。

 米シアトル発「エースホテル京都」、レストラン、カフェ、アパレルショップ、ミニシアターなどを集めた烏丸エリアの中核であり、旅のスキマ時間を過ごすのにちょうどいい場所。こちらの中庭の、せせらぎが寄り添う小径に植えられたさまざまな品種の紫陽花のインスタレーションがおすすめです。ビルが立ち並ぶ街なかのオアシス的なスポットとなっています。

 この中庭に面した「(THISIS)SHIZEN」は、日本の在来種を中心とした植物、うつわ、自然農法の素材で作る食・茶・酒、アートを展開するハイセンスなショップ。餡(あん)で作った精巧な花をブーケに見立てた季節替わりの「アイスブーケ」が大人気で、今は紫陽花に見立てた紫陽花ブーケがお目見えしています。

 そのほか、新風館内のかき氷専門店「お茶と酒 たすき」では、宇治の老舗茶商が吟味した宇治茶を使った「抹茶みつ」や「焙じ茶みつ」のかき氷が楽しめますよ。蒸し暑い時期にうれしいひんやりスイーツと、紫陽花をまずは楽しんでください。

新風館(中京区)で見られる紫陽花のインスタレーション新風館(中京区)で見られる紫陽花のインスタレーション