京都きっての文化ゾーン「岡崎」で触れる花とアート

地下鉄東西線「東山」駅から徒歩10分。以前、繊細なレースにシンボルの桜と橘の刺繍(ししゅう)をあしらった「優美守」(第47回参照)をご紹介した平安神宮も、水無月(みなづき)おすすめの花名所です。京都の名庭を語るのに欠かせない作庭家、小川治兵衛による四つの神苑は、つい先日、関連施設が国宝・重要文化財に指定されることとなった「琵琶湖疏水」の水を引き込んでいます。
西神苑の白虎池では、江戸系、伊勢系、肥後系といった日本古来の品種約200種2000株の花菖蒲が植えられており、ようやく咲き始めたところ。池のほとりから遠目に眺めるだけでなく、池の上に架けられた「八ッ橋」をそぞろ歩きながら間近で花をめでられるのが魅力です。
平安神宮を参拝した後は、参道沿いに立つ京都市京セラ美術館へ。1933(昭和8)年竣工の大礼記念京都美術館を前身とする国内で最も古い公立美術館建築で、国の登録有形文化財。鉄筋コンクリート造りの近代建築の中央に城郭を思わせる和風の屋根を冠した、和洋折衷建築です。改修や新館「東山キューブ」の新設を経て、5年ほど前にリスタートしました。石造りの階段、天井のステンドグラス、タイルなど、建築当初からのうるわしき意匠を残す西玄関付近は見逃せません。

四季の彩りに染まる日本庭園に面した東山キューブで、9月7日(日)まで「草間彌生 版画の世界―反復と増殖―」を開催中です。草間彌生は、ビビッドな黄色地に黒の水玉を幾何学的に描いた作品「南瓜」があまりにも有名な世界的アーティスト。世界最大級の草間コレクションを誇る松本市美術館所蔵の版画作品から厳選したものに、作家蔵の作品を加えた 約330点が展覧されます。
アート鑑賞の後は、館内のメインエントランス横のカフェ「ENFUSE」で休憩を。京都近郊で採れた食材を盛り合わせた「京の素材のおかずプレート」や、サンドイッチなどの軽食、ケーキや展覧会とのコラボ和菓子が楽しめます。
京都市京セラ美術館から白川沿いを南へ5分ほどの「com-ion(コミオン)」は、カフェ、オールデイダイニング、清水焼の工房兼ショップ、コワーキングスペースの四つからなる文化複合施設で、今春オープンしたばかりの話題のスポットです。
築110年を超える古民家を、伝統工法を大切にしつつも新しい感性を光らせてリノベートしたアートな空間も見どころです。施設内の「ほとり」は、せせらぎをすぐ間近に感じながら、ワインやビールでちょっと一杯を楽しめる、気軽なカフェスタンド。清水焼の工房兼ショップ「時の端」は、荷物が重くなる心配のないサイズ感もうれしい花器や豆皿などのハイセンスなうつわもそろいますので、ぜひ、のぞいてみてください。
