2024年末、政府は、この高額療養費の見直しを決定し、25年8月から27年8月にかけて、所得区分の細分化と自己負担限度額の引き上げを段階的に行う予定にしていた。だが、がんや難病の患者団体が限度額の凍結を求めて粘り強い活動を展開し、さらには野党だけではなく、与党内でも反対意見が広がったことで、最終的にこの見直しは白紙撤回された。

 とはいえ、高額療養費の見直し案は完全に消滅したわけではなく、厚生労働省に新たに設置された専門委員会で、25年の秋までに見直しの方向性が決められることになっている。答えが出るまで先行きは不透明だが、それまではこれまでの自己負担限度額が継続され、これまで通りに制度を利用できる。

 そこで、この機会に改めて高額療養費の仕組みを確認しておきたい。とくに、就職したばかりの新入社員は、高額療養費の所得区分の裏ワザを知らないと大損してしまう可能性があるので注意が必要だ。

まずは「高額療養費」の
基本の仕組みを知ろう

 前述のように、高額療養費は、患者が支払う医療費の自己負担額に上限を設けることで、医療費の負担を軽減する制度だ。

 病気やケガをして病院や診療所を受診すると、通常は年齢や所得に応じてかかった医療費の1~3割を自己負担する。

 たとえば70歳未満の人の自己負担割合は3割なので、医療費が5000円なら自己負担額は1500円、医療費が1万円なら3000円を窓口で自己負担する。この程度なら、毎月の収入からなんとか払える金額だろう。

 だが、医療費が100万円、1000万円と高額になると、3割といえども相当な負担で、一般市民が払える金額ではなくなる。

 そこで登場したのが高額療養費だ。医療費が一定額になるまでは、年齢や所得に応じた自己負担割合(1~3割)を支払うが、その上限を超えた部分の医療費については、負担が軽減される仕組みになっている。