
「高額療養費」の自己負担限度額の引き上げが2025年8月に予定されていたが、見送られることになったのは記憶に新しいだろう。『医療費の裏ワザと落とし穴』295回では、現行の制度の仕組みをおさらいし、特に新社会人が利用する際に損しない“裏ワザ”をお伝えする。(フリーライター 早川幸子)
医療費の自己負担に上限を設け
過度な負担がかからないように
新年度が始まってから早2カ月。この4月に就職した新社会人も、少しずつ仕事に慣れてくる頃ではないだろうか。
学生時代は親の公的医療保険の扶養に入っていた人も、就職すると勤務先の健康保険などに加入し、自分で保険料を負担するようになる。
会社員や公務員など被用者(雇用されている人)のための公的医療保険は、毎月の給与やボーナスから一定の保険料が徴収される。有無を言わさず、強制的に天引きされ、手取りは減ってしまうので、不満に感じている人もいるかもしれない。
だが、公的医療保険に加入することで受けられる保障は、病気やケガをしたときの医療費が3割(70歳未満)になるというだけではない。他にもさまざまな保障が用意されている。とくに、新社会人に覚えてもらいたいのが「高額療養費」という制度だ。
高額療養費は、医療費が高額になっても、1カ月に患者が支払う医療費の自己負担額に上限を設けることで、家計に過度な負担がかからないように配慮した制度だ。
この制度があるおかげで、医療費が1000万円、2000万円と高くなっても、自己負担額は一定範囲に保たれ、際限なく患者の負担が増えていくという心配はない。非常にありがたい制度だ。