
八木信之介(妻夫木聡)は
一体何者なのか?
みんなこわそうななか、嵩の戦友(バディ、新兵の世話をする先輩)となった八木信之介(妻夫木聡)は暴力的でない。だが静かにこわい。こういう人が一番こわいのかもしれない。
八木は「軍人勅諭」を明日までに「暗記しておけ」と渡す。井伏鱒二よりも「軍人勅諭」。
軍隊の1日からスケッチされる。朝、6時起床ラッパで起きて(消灯は9時30分なので睡眠時間は十分)、訓練。匍匐(ほふく)前進。朝食後、学科または教練。昼食はあるのかないのか割愛され、夕食中も先輩たちが言いがかりのようなものをつけ、「歯を食いしばれ」と何かとビンタ。
でもそれを八木が止める。「飯の最中だ。埃が舞うだろう」と紳士的だ。
のんびりした嵩は、こんな厳しい状況についていけない。ここでやっていけるかなと不安で食欲のない嵩に対して、幼馴染の今野康太(櫻井健人)は「軍隊は天国じゃ」と食欲旺盛。カレーが食べられるのだからマシということなのだろう。なんだか極貧の人が食事にありつけるから刑務所に入りたいと考えることに似ているような気がしてしまった。
マシといえば訓練よりマシなのが馬の世話。馬は蹴られることに気をつけていれば暴力を振るわれずに済む。
それにしても八木だけは殴らないのはナゼなのか。誰もが八木には一目置いているようで、嵩は八木のことが気にかかる。
あるとき、班長・神野万蔵(奥野瑛太)が、新兵がトロいから上に怒られたとものすごい勢いで新兵たちをビンタしていたら、八木が止めに入った。
ムッとした馬場と神野は、盗みのいいがかりをつけて、嵩を何度もビンタする。
往復ビンタを神野と馬場からされ、なおも続きそうだったとき八木が現れる。
八木は面を貸せと嵩を連れ出すが、どうやら助けてくれたようだ。
「おまえは戦地までもたないかもしれないな」と絶望して首を吊る人もいると言う。
軍隊、こわすぎる。豪(細田佳央太)もこんな感じで苦労したのだろうか。
八木はビンタの代わりに靴磨きをさせる。
暴力にまみれた場所でうなだれている嵩の背後で、
「新兵、たるんでるぞ立て」と声をかけた者がいた。
コン太に次いでなつかしい人との再会が。